第82話
【ヒナタ】
「バイマン殿ぉ!
住民の避難は終わりましたぁ」
地下都市というものがこの街の地下には存在するらしい。
悪魔城が現れた時、領主と貴族、裕福な市民は早々に避難できたみたい。
城壁の外にいる人達も腕に覚えのある冒険者や傭兵団の抵抗もあり、いくらは避難できたみたいだけど壊滅的らしい・・・
当初は吸血鬼に押されていたがクロスの住んでいた家からハルオが盗んだ武具を装備したリーマンの戦士はヴァンパイア達の撃退に成功した。
そして今、悪魔城に反攻をしかける準備を初めている。
そして私は勇者としてで参加を命じられた。
目の前にはアンデット化しないように焼かれる城壁の外にある無数の死体の山がある。
配られたポーションを飲んだせいか、怖いけど心は落ち着いてる。
でも、当分夢にでそうかな・・・
森の奥まで後退した悪魔城を見る。
あの場所はフィリアがいる家の近く。
あの子、酔ってると結構無茶するから心配。
クロスも家戻ってるはず。
迷宮内に逃げ込んでくれれば良いんだけど。
助けにいきたい。
獣神がクロスの名前を叫んだ
獣神の叫びを聞いた周りの人達は何者なんだと騒ぎになっている。
ハルオはシンジを連れてリーマンの人達に説明を始めた。
やりとりを聞くと、不滅の魔王と瓜二つの姿をした別人。
伝説級の迷宮最下層に住み、伝説級の装備を無造作に家に放置しながら、世界を飲み込むという黒蛇と共に暮らしていた無口な子。
シンジが言うには、不滅の魔王と同じで神々に匹敵する力を持っているが中立的。
不滅の魔王を嫌っていて、人間族を敵視していにないから、絶対に敵対的な関係になってはいけないそうだ。
そういえばフィリアは神託でクロスの好みの男性を聞けといわれていたらしい。
よく考えたら、友好的な関係を持とうとしていたのかもしれない。
あんな所に住んでいる子が普通なわけないか。
「反攻は中止!
城壁が崩れて行る場所に防衛に専念しろ!」
バイマンさんの指示に集まった人達が動揺する
「なぜだ!
このまま勢いに乗って攻め込めばあの悪魔城をたたき落とせるだろ!」
「ダメだ!
悪魔城にはクロス殿がいる可能性が高い!」
「それが何だって言うんだ!
この死体の山を見ろ!
俺たちだけでも攻めいるぞ!」
「静まれ!
これから聖女様がお話になる。
全員傾聴しろぉ!」
バイマンさんが大声を上げてると、みんなは黙ってシンジの方を見た。
「皆様、女神メルマ様から御神託がございました。
悪魔城の主、ダルクが精鋭を率いてこちらに攻め込んで来ます。 さらに竜王を筆頭に多くの魔王の軍勢がこちらに向かっています。どうか皆様は地下都市の守りに専念してください。
今、生きている人達を守るのです!」
金の刺繍が施された純白のローブを着た女の子が両手を組み、祈りを捧げるようなポーズでみんなに訴えた。
・・・
・・・
・・・
あれ、シンジなの?
いつもの「ござる」はどこ行ったの?
「はっ!
シンジの奴、様になってきたじゃないか!」
マユミが私の横に来て、カッカッカと笑っている。
「あれ、シンジ?
いつ猫を被る事覚えたの?」
「あはは、シンジの奴はハルオと二人で10分位姿を消したんだよ。
戻ってきたら、ハルオはすっきり顔、そしてシンジはあんな感じになってたんだ。」
「二人で?」
「わかるだろ?
ハルオの奴、溜まってたんだな。
ヒナタは別れたんだろ、正解だよ
リーマンの女の子と婚約した直後だぜ?
本当に見境の無いゲス野郎だな」
本当・・・
ちょっと寂しいけど。別れてくれて正解だったかな。
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