第78話

 整った顔立ちに長い金髪に碧眼。

金色の刺繍が入った黒いローブを着た、ミリアさんが現れると、どす黒いオーラが俺の横にいるアレクサから溢れ出す。


「貴様は吸血淫魔王のミリアではないか、このような所に何の用だ」


 さっきのイケメンの時よりも明らかに低いトーンで話しかけている。

 たしか、仲が悪かったというか、ミリアさんがイジメられてた記憶がある。


「とりあえず、中に入れてくれないかしら」


ミリアさんはアレクサを一瞥したあと、ニヤリと笑ったあと、すぐに俺に話しかける。


黒バニー達の殺気が一気に上がった。


「アレクサ、いい?」


 アレクサに確認を取る。

了解を貰わないと一気にここが鉄火場になるような気がするからだ。


「御心のままに・・・」


相棒、入れてあげて。


結界の一部に人が通れる穴があくと、ゾロゾロと入って着た。


なぁ、相棒。

ここに着て1日位なのに、知ってる奴がいっぱい集まってきた。

こんな偶然ありえん。

なんか原因があるはずだと思うんだ。


『原因は不明デス』


発信機的な物でもあるんじゃないか?

原因を解明しないと、どこまでも追ってこられそうで怖いんですが?


『そんな物はないデス』


むぅ。


ミリアさんは俺の前まで移動して、ソファやテーブルの形に変形したスライムに座ってじっと俺の後ろに引っ付いてるフィリアをジーっと見てる。


「今度はその女の子がお気に入りなのね。」


「大切な、仲間」


 お気に入りとかじゃないし。

もう、心に決めた嫁がいる。

浮気なぞしないのだ。


 短い期間だけど、最下層から地上まで一緒に登ってきた仲からな。


「妹様は手助けをもう断った。

 他に何か用があるならさっさと言え」


「クロスには責任をとってもらいたいですわ」


「責任?」


 その言葉は嫁を見つける前に聞きたかったぜ。


「私、人間を止めさせられて、吸血鬼なったせいで、国には帰れないし、元同僚達に命は狙われるし、さんざんな目に遭ってるんです。」


あれはボールド奴が勝手にやったんで、俺は全く関係ないのだが・・・


「故郷の王様やってるからじゃぁ・・・」


なにやら、黒バニー達ひそひそ話してる。


「おっほん!!

 異世界から召還された勇者達が、どこで手に入れか分からないのですが、失われた伝説級の装備して反撃してきたせいで、我々は早くも守勢に転じているのです!」


 ヘェ、俺を襲ってきたときはそこまで強力な装備つけてた印象ないんだけど?


「自己責任、がんばれ」


取りあえず、これって俺が責任とる必要ある?

攻め込んだけど、必死の反撃で押されてるだけ。


「冷たいですね。

 このままだと私は昔の同僚達に殺されてしまいます。

あの人たち、私を裏切り者扱いして目の敵にしてるのです。

私、自分の意志で裏切っていないのに!」


「男漁りとかやりたい放題したからじゃ・・・」


黒バニー達が聞き捨てならないことをひそひそ言ってる。


「と、とにかく!

 クロスには元同僚達から私と仲間達を守る義務と責任が有るのです!」


「「「はぁああああ!」」」


 黒バニー達なんかすごく怒っているな。

まぁ、最後は暴論でごり押ししてきたしな。


最初から攻め込むなよ、とか、さっさと撤退しろよとか言いたいことは沢山ある。


後ろで頭を抱えているイケメンたちをみるとちょっと気分良いけどな。


「妹様!

 さっさと追い出しましょう!」


アレクサはすごい剣幕で俺に迫ってきた。


とわいえ、本当にミリアさんの生命の危機が迫っているのなら、見捨てるのにはすごい抵抗があるな。


だが、フィリアという問題もある。

さすがに悪魔城に入ると今度はフィリアが命を狙われるという問題が出そうだ


うーーーん・・・


「クロス、悪魔城はだめ・・・」


当然、フィリアは反対。

俺も行きたくはない。


「そういえば、あなたの家族は私が保護してるるわよ」


「え?」


「その雪のような白い髪、フィリアお嬢様でしょ?」


ミリアさんさんの一言でフィリアが激しく動揺し始めた


「どうゆう、こと?」


っていうか、人質?


「あらかじめ言っときますけど、善意で助けたのよ。

あなたが逃げたせいで、伯爵家はおとりつぶし、国外追放になったので保護したのよ」


「どうして、保護した」


相棒、おかしいよ。

なんか準備が良すぎる。


『不明デス』


むぅうう。


「だって、私のお母さん、この子の家の使用人だったのよ。

レリーフっていう私のような金髪碧眼の女中がいたの覚えてる?」


「うん・・・

 いた・・・」


 ドヤァと得意げな顔で俺を見るミリアさん。

フィリアは縋るような目で俺を見ている。


仕方ない・・・


相棒、ミリアさん助けていい?

結界はるの手伝ってくれるよね。


『了解デス』


「はぁ・・・

 分かった。

 守るだけ、手伝う。」





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