第38話

目が覚めると森の中だった。

上を見ると雲一つない青い空、明るい日差し。

チュンチュンと小鳥が鳴く声は傷付いた俺の心をいやしてくれる。


本当に酷い目にあった。

だけど忌々しいパンツがなくなり、全裸のイブ状態であるのは僥倖か。


相棒、ここどこ、鏡どこ?

まぁ、さすがに服を着たいんだけど?

民家とか近くにあるのかな?


『ここは世界屈指の大迷宮の最下層デス』


ん?

迷宮の最下層なの?

明るいし、森だし、とてもそんな感じには見えないんだけど。


『本当デス』


へー、なぁ、相棒。

俺はお前に恨まれるようなこと、何かしたかな?


『特に恨みなど無いデス』


じゃあ、どうして大迷宮の最下層なの?

俺みたいな雑魚は軽く捻り潰されるとおもうけど?


『安全だからデス』


ん?

安全なの?

超絶強力なモンスターとか精力ましましのゴブリンさんたちとか居ないの?


『YESです』


おお、そうか、安心したよ。


でも、全裸はさむいし、服とか欲しいんだけど、無理だよね?

どうしたらいいんだ?


『過去にこの迷宮の主に挑んだ冒険者達の遺留品があるはずデス

ところで何をしているのデスカ?』


ちょっと、女体の神秘について探求を・・・


・・・

・・・

・・・

んんっ!


『早く衣類など探さ無いのデスカ?』


始めたばかりなのに・・・


『まずは衣食住を整えてからのほうがよいデスネ』


分かったよ!

何時でもできるしな!

って、衣食住なの?

ここに住むの?


『YESデス。

 あまりにもあなたは弱いので、ここで少し修行を行うべきデス』


弱いっていわれてもなぁ。

平和な日本で生まれ育ったデスクワーク中心のおっさんだし。

闘争本能なんてもう枯れてしまってるんだよな。

つまり、何が言いたいかというと。相棒が助けてくれ。

と俺はお願いしたい。


『私の力では限界があるデス』


むぅ、たしかにあの元人格には手も足も出なかったな


そういえばあいつは追っかけて来ないの?


『ここに来るにはあの特異点の中にいるもう一つの私の協力が必要デス。

最後にあなたを助けたことから想定するに、間違いなく協力しないデス』


想定なのに間違いなく?


『私はあの特異点の中のもう一つの私がこの世界から消えるまでの情報を保持しているコピーデス。

問題が発生したときに行う行動は同じデス』


そうか。

あとコピーっていうのは止めるんだ。

おまえはおまえ、俺にとって大切な相棒だし。


『了解デス

まずは左に進むと石畳の広場があるのでそこに向かうデス』


はいよ。


左に進むと相棒の言うとおり、石畳の広場があった。

広場の横には幅1メートルくらいの水路があり、魚が泳いでいる。

広場の中には大量の白骨化した死体があちらこちらに散乱していた。


『これはこの階層にいた大天使と戦って死んでいった者達デス』


え?

なんで天使?


『不明デス』


そうか・・・

よくわからんが、後で埋葬しよう。

まずは戦死者さん達を弔おう。


南無阿弥陀仏。


・・・

・・・

・・・


白骨化した遺体から色々漁ってみたけど、風化してボロボロで汚い鎧とか服ばかりしかなかった。

アクセサリーや武器類も汚れが酷い。


おっ!

綺麗なローブ発見!


相棒、これ着て大丈夫かな?


『大丈夫デス』


おお。

ん?

相棒は鑑定使えるの?


『そのローブは記録にありますデス』


ほほう、いい感じにチートなローブなの?


『銘は無いですが、あらゆる系統の攻撃に耐性が有りますデス』


いいよ、いいよ!

じゃあ、おれが『チートローブ』と命名使用じゃないか!


『そのまんまデスネ』


いいじゃないか。

これは水路で洗濯してから着てみよう。


『鞄も確保するデス

 大容量、時間停止付きの鞄を使っているデス』


おおおお!

チートバッグか!


白骨死体が持ってるバックパック開けると中は不釣り合いなくらい広い空間があり、小さな樽やら箱の他に木造平屋の模型が入っていた。


『この家の模型は人が住めるくらい大きくなるデス。

水、食料、薬剤など一通り揃ってるので障害物の無いところに置くデス』


相棒の言うとおり、広場の真ん中に置くと、どんどん大きくなって、平屋の家が現れた。


さすがは相棒だ。

素っ裸でどうしようかと思ってたけど、ちゃんと衣食住が確保できるところで復活してくれたようだ。




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