第36話

目の前で行われているワイアットさんに対するもう一人の別元人格ちゃんの最悪の愛情表現は放置する事に決めた。


壊れた愛情表現を受けているワイアットさん・・・ 南無阿弥陀仏。


周りの様子を見てみると、黒バニーやらビキニな鎧のおねーさん、牛や馬などの色々な衛兵さん達の視線はもう一人の元人格ちゃんに釘付けなので、綺麗にフェードアウトする事にする。


折角異世界に来たのだから、俺はこれを機会に色々探検してみたいのだよ。


問題はのっとられミリアさんだ。

助けに行ったとしても、乗っ取られた状態を回復するすべがない。


相棒、何かに乗っ取られているミリアさんを解放する事出来る?


・・・

・・・

・・・


反応ないな。

解析とやらに忙しいのかな?


『不可デス』


むぅ、であるか。

相棒は忙しそうだな。


「あぁーーーーん! きたーーーーー!」


 もう一人の元人格ちゃんは悦声が聞こえたので見てみると、ワイアットさんと常人には絶対にできないハードなグロプレイ中・・・

可哀そうに、ワイアットさんは死にそうな顔だな。


正直、もう直視できないので、とりあえずイオリのところに行こうとおもう。

そう、旅に出るには金が必要なのだ。


相棒、すこしは何かわかった?


『あれもこの世界の特異点デス』


特異点?

ふむ、平行世界説は間違いなの? 実は複数の美少女ボディさんがいるわけ?


「お前は何者じゃ! どこにいくのじゃ!」


勇者の剣をもったゴルドラが俺の前に立ちはだかり剣先を俺に向ける。


俺の聞いていた話だと明らかにあっちは元人格ちゃんそのものの素行だから、必然的にこちらの方は偽物となる。


そしてそれは大正解。

少なくとも中身は別人だしな。


ちなみにアングル的に剣の中にいるラファさんを足元から見上げる感じなので、観音様が見えそうだけど残念ながら見えない。


「イオリに、あう」


 とりあえず普通に目的を答えて、横を通り過ぎようとしたが、ラファさんの臀部ではなく、勇者の剣で制止された。


「話は終わっておらぬ! お主は何者なのじゃ!」


相棒、この子助ける事は出来る?

さすがに可哀想なんだけど。


『可能ですがおすすめしないデス』


なんで?


『先ほど上空からこの街に対して大量破壊魔法を行使したテロ勇者デス』


うーむ、確かに・・・

安全を担保せずに開放するのか危険か・・・


「お主、妾の問いに答えぬか!」


ゴルドラは少し怒っているようだ。

しかし何者って言われてもなぁ。


「ひひひ、そやつは我の妹だ」


はい?

後ろから、気を失ったワイアットさんを引きずりならもう一人の元人格ちゃんが走って近づいてきた。

開胸グロ状態のところは、ものすごい勢いで再生中のようだ。

しかし、これはこれでグロい・・・

と思っていたら、抱き着かれた。


ひぃぃ、これからグロプレイに強制参加なの?

まじで逃げたいんだけど・・・


・・・

・・・

・・・


と思ったら、嗚咽が聞こえる。


「我はうれしいぞ・・・ はるか昔にこの世界とともに生まれ、我は今までずっと孤独、いやネオしかいなかったから・・・」


うーん、長生きの人がもつテンプレ特有の苦悩か・・・

怖いから一緒にいたくないんだけど、離れるのはかわいそうな気がするなぁ。


相棒、説明求む。


『我々はバックアップのようデスネ。 元々いた世界の特異点が消えたため顕現したと思われるデス。

あと、ネオとは向こうの中にいる私のような存在デス』


俺は?

バックアップじゃないよね?


『あなたにわかりやすく言うなら魂なき体に宿った異世界人の魂デスネ』


えっと、つまり、この美少女ボディの元人格ちゃんなんていなかったと?


『YESデス』


 ちょっとお! 俺、元人格ちゃんに体返さなあかんし、度を過ぎたエッチな事はできないとか、色々気に病んでたんだけど!


『問題解決デスネ』


じゃあ、最初に初期化とかいってチートスキル消したというのはどういうことよ?


『あなたにわかりやすく例えるなら、新しいPCにOSをインストールするときはHDDを初期化しますデス』


わかりやすすぎて、複雑な心境だ・・・

ちなみに今はSSDの方が主流だからね。


『それはどうでも良いことデス』


はいはい、ちなみにオリジナルさんが帰ってきたのなら、消えちゃうとかしないわけ?


『生まれた赤子を母体に戻すことはできないデス』


じゃあ、ずっとこのままなの?

そもそも、特異点ってなにするわけ、存在する意味がわかんないんだけど。


『存在する意味は不明です。

 ただ、現時点でこの世界には特異点は2つ存在することになりましたデス』







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