第32話

「うぉぉおおおおおおおお!」


 斬られたらとても痛そうな剣が頭に向かって振り下ろされてきたが、急に右手が勝手に動いて、手甲で剣をを払いのけた。


そして顔面に向かって自動的に左ストレートを放つとワイアットさんとの間に半透明の盾が現れて防がれる。

 ワイアットさんは次々に斬撃を繰り出すが、全て自動で払いのけたので、再び殴り返したが、半透明の盾が現れてこちらの攻撃も全て防がれた。

相手も魔法の盾みたいなやつで自動で守っているみたいだ。


 勝手に体が動くというのはかなり気味が悪いので、一旦攻撃を止めて後ろへ下がろうとすると、勝手に体が動く事はなくなり自分の意志で動かすことが出来たので割り込みはできるみたいだ。


 これは何て言うか放置ゲームの自動狩りに近い。体が勝手に攻撃、防御を行っている。

ぶっちゃけ楽チンではあるのだけど、殴ったり蹴ったりしている手足がものすごい痛いです・・・。


相棒、痛くて無理!


『ガマンするデス』


むぅうう・・・

周りの様子を見ると、いつの間にか黒バニー達と完全武装の人達が戦って・・・いるのかな?

取りあえず黒バニーが沢山いて、完全武装のお兄さん達を追いかけている。


「そこのおにいさーーーん。私とキャッキャウサウサしましょー!!」


「来るなー! ヴァルキリー隊は何をしてるんだーーー!」


 どうやら戦ってはいないようだ。

美女達に追いかけられるって羨ましいけしからん状況なのに男達は何で逃げてるんだ?

周りの状況がこんな感じなので、まともに斬った、殴ったなんてやってられないんだけど。


「へぁぁああああああああ!」


 瞳孔がハートマークになった黒バニーに囲まれた完全武装のお兄さんが黒バニーの剣をを振り下ろすと「きゃあああああ!」大きな悲鳴をあげた後、両手を頭に乗せてかがみ込んだ。

耳がペタンと倒れていて、上目遣いで潤んだ瞳を向けられた完全武装のお兄さんは、さすがにそのまま斬りつける事が出来なかったのか、頭の上で寸止めした状態で硬直した。


「しっかりしろ!! カーツウェル!!」


 ワイアットさんが何故かカーツウェルさんの方に向かおうとしたが、美少女ボディが勝手に動いて殴る蹴るを始めたので、周りを気にしながら守りを固めている。


 因みにカーツウェルさんは別の黒バニー達のタックルで押し倒され後、マウントを取られると、慣れた手つきで鎧を脱がされた。

そして手を豊かな胸に当てて怪しく「あぁーーーん」といやらしい声を上げて腰を動かし始めるという、うらやまけしからん事を始めた。


相棒、一応、ここは鉄火場なんだよね?


『戦いに集中するデス!!』


めちゃくちゃ気になるので無理!!


『真面目にやるデス。

手加減を減らすので、そろそろ上司の顔を思いだすデス』


ん?

ああ、そうだった。


でもなぁ、あいつのことはもうどうでも良くなったんで、怒りが沸いてこないんだよな。


『なら、黒ウサ郷で黒兎族と子作りに励んでいるレムヲン「イラァ!!!」

・・・

いい感じデス』


 俺がイラァっとすると、ワイアットさんは距離を開けた。


「ルゥイ! いや、魔王!!! みんなを解放しろ!!!」


こう言うことは、斬りかかる前に行ってほしいんだけど!


「連れて、行って、いい」


 大きく頷いた後、周りを見回す。

装備品をはぎ取られた気を失った幾人かの半裸なお兄さん達は、黒バニーにと共に次々転移を始めていた。


おのれぇ・・・ 

うらやまけしからんので、ぶっちゃけ早く助けあげて欲しい。


というか、いつの間にかワイアットさんも黒バニー達に囲まれてしまったので、この人もお持ち帰りされるんじゃないか?


『勇者達は邪魔デス。このまま黒兎族に攫ってもらうデス』


 えーー!

うらやまけしからんから、捕まった男どもは解放させようよ!


『敵は魔王城の塔の上デス。 こちらの様子を伺っているいるデス』


むぅ。

俺の意見はスルーですか?

まぁ、いいけど・・・

じゃぁ、ここは放っておいて、向かったほうがいいの?


『不用意に近づくのは危険デス。 出方をうかがうデス』


はいはい、そうですか。

じゃあ俺はワイアットさんの貞操を黒バニーから守ろうかな。


「黒兎人ども、そやつは、妾の獲物じゃぁ!!」


ゴルドラの声がしたので振り向くと、彼女はラファさんを構えてワイアットさんを睨んでいた。


「ゴルドラ・・・ それ・・・  なに?」


 透明で巨大なガラスで出来ているような剣。

中には鎖でエロい感じに縛られた全裸ラファさんが封じ込まれていた。


「これぞ妾の勇者の剣じゃ!! ルゥイ! お主はもういいからさがっておるのじゃ!」


相棒・・・


『アンキモ族の卵狩りレベルの異常さデスネ。』


 ラファさんは顔を真っ赤にして振り回される剣の中で泣いてる。

ワイアットさんも顔を真っ赤にして必死にゴルドラの斬撃を避けている。


「卑怯者め!」


「やかましい! 主らも妾の同胞の体を使って武器を作っておるじゃろうがぁ!

下僕!! もっと魔力を絞り出すのじゃ!!」

 巨大な剣の中に封じ込められているラファさんが苦悶の表情になると同時に、勇者の剣は更に強い白いオーラを纏い始めた。


竜の鱗や牙はファンタジーな世界では良い武器や防具を作るための鉄板の素材だからなぁ、ゴルドラはかなり怒っているようだし、この世界でもゲームみたいに乱獲されているのかな?


『あの二人の勇者にはドラゴン・スレイヤーの呪いが掛かっているデス』


それは過去にドラゴンを倒したっていう、いい感じのかっこいい称号じゃないの?


『違いますデス。 竜種を殺すと同時にかけられる呪いデス。

 竜種はこの呪いを持つものを憎悪しているので、出会えばすぐに仇討ちが始まるデス』


 そ、そうか。元人格ちゃんとか大丈夫だったの?

ドラゴンとか平気で狩ってそうだけど?


『今は和解しているので、大丈夫デス。 くわしく話せば長くなるので、今度にするデス』


そうか・・・

黒バニー達はゴルドラとワイアットさんの争いは放置して勇者達のお持ち帰りを始めてるので、俺も放置するか。


あ、そういえば、塔の上ってミリアさんが居るんじゃないの?


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