第31話
ミリア視点
女神様の御神託がくる。
この尊いお方から熱いまなざし受け、直ぐにでもひれ伏したくなるような感じ。
一度、女神様の声を聞いた事あるからだろうか、私には分かる。
直ぐにでも女神様に祈りを捧げて、御神託を受け取ろうと思うのだけど、周りに同僚が居るので、人間族の女神様に祈りを捧げる所をあまり見られたくない。
私は同僚達の事をまだ恐れている。
黒兎族に捕まったあと、オークの料理人と一緒に私を使った献立を考えていた時の彼女達が私を見る目。
同情や哀れみ、罪悪感の欠片も無く、あれは狩人が捕まえた獲物を捌く時に似ている。
「どうしたのですか? ミリアさん」
メイド服に厳ついメイスという、不釣り合いな装いの元同僚・・・いやまだ同僚の白羊族の女性が心配そうに私を見ている。
「えっと。 ちょっとお腹が空いて・・・」
「あら、まだ足らないのですか?」
同僚が驚いた顔で、机の上にある干からびた豚と私を交互に見たあと、別の同僚に言って、豚のお肉と赤い酒を用意してくれた。
あ、また女神様の御神託の感じが。
早くお祈りをしないと行けないのだけど、目の前におやつが・・・
よっし! さっさと食べた後、隠れてお祈りしよう!
実際、金豚の血だけでは少し物足りなかったし、吸血鬼は空腹になると、凶暴になるそうなので、先に頂くことにする。
・・・
・・・
美味しい。
一通り食べ終わると、ルゥイが持って行こうとしていた手鏡を取る。
自室にある普通の鏡だと吸血鬼は写らなくて困っていたのだけど、この手鏡は私の顔を写してくれるので、口元の汚れを拭き取って、軽くお化粧をする。
血のように赤い唇の色を調整して薄いピンクにする。
そして目の下の隈を消すと・・・
ああぁ・・・ 吸血鬼になって良かったぁ。
今の顔がどうなっているか気になっていたのだけど、ヴァルキリーの中でもトップクラスの私の美貌は健在ね。
そしてこれからはずっと老化を気にせずに一番最高に美しい今の私の姿を維持できるなんて夢のようだわ。
あ! いけない! また女神様の御神託の感じが!!
早くお祈りを『ピカーアアアアアア ドゴーーーン』
お部屋の中が真っ白になる程の閃光と轟音。そして獣の咆哮と、どこかで聞いたことある女性の悲鳴が聞こえた。
窓から外の様子を見ると、街のあちこちから火の手が上がっていた。
ワイアットさんを始めとする男性の勇者とお仲間さん達は黒兎族から逃げ惑っているのが見える。
確か黒兎族は男性特攻種だから分が悪そうね。
女性の勇者とお仲間さん人達は手足が生えた魚に襲われているみたい。
見たことのある元同僚達もいるけど、私と違ってとても強いし、魚人は大して強く無さそうだから大丈夫だと思う。
「ミリアさん。 処女じゃなくなったヴァルキリーってどうなるですか?」
今の同僚がニヤニヤと嗤いなが話しかけてきた。
嫌な質問だ。
「女神さまから授かった聖なる力が弱くなるわね」
処女じゃなくなると女神様の信託が受けれなくなり力も弱くなる。
そして殆どのヴァルキリーは辞めることになるけど、詳しく教える必要もないので、おおざっぱに答えることにする。
まぁ、処女だったとしても、昔の私のように受け取れなかった人はたくさんいますけどね!
「それだけなの? つまらないわねぇ」
つまらないって・・・
白羊族って温和そうな見た目なのに、ものすごく性格が悪いのよね。
う・・・ また女神様の御神託が来る感じが・・・
どうしよう・・・
・・・
・・・
・・・
ん?
あれ、やけに静かになったわね。
それに同僚がピクリとも動かなくなった。
『あなた! 私がせっかく何度も呼んでいるのに、無視するって酷いですわね!!』
あ、やばい・・・
女神様が直接来ちゃったわ・・・
声がしたほうを見ると、巨大な時計の針の上で横になっているピエロのよう変わった装いと化粧をした女性がこちらを睨んでいた。
美人ね・・・ でも勝った! 容姿は私の圧勝ね。
「あ、あの・・・無視したわけじゃないのですど、色々私にも都合あるんですが・・・」
『私の神託より、おやつのほうが大切なのですか?』
あっちゃーーー。 どうしよう。
適当に言い訳したら、もろにばれてるというか・・・、どうしておやつを優先したって知ってるのかしら?
「あの・・・ ひょっとして・・・」
『ええ、あなたの考えていることは、私に筒抜けですよ?
よかったですね。 私より容姿が優れているのですよね?』
うわぁぁあぁああ!
やっぱりーーー!!
どうしよう殺意を宿した目で睨まれてるぅ!!
「申し訳ございません。 メルマ様」
・・・
・・・
・・・
あれ、素直に謝ったのに、さっきよりも睨まれている・・・
『女神の名前間違えるなんて、あなた本当に私たちの使徒なの?』
はい?
『ほら! 私のルロクル(時計)をよく見なさい』
ああ、そういえば、時間を司る神様というのは思い出したけど、マイナーすぎて覚えてないのよね・・・
ってこんなこと考えじゃダメ!
ほら、段々、女神様の目つきが厳しくなってきたわ。
えーっと、んーーっと、なんていう名前だだったかななぁ・・・
マイナーだから・・・、マイナー・・・、マイナー・・・。
はっ!!! 思い出した!!! タイマー様だわ!!!
「失礼しました! マイナー様!!」
じゃない! わたしぃぃいい!!!
『タイマーよ!!!!』
・・・
・・・
・・・
気まずいわ・・・
「あの、本当に申し訳ありません。 それでタイマー様が、私なんかに何の御用でしょうか・・・」
平身低頭しつつ、神託の内容を聞こうとしたけど、タイマー様はものすごくいやらしい目つきで嘗め回すように私の体を視姦しはじめた。
『あなたの体に用があるの』
うわぁぁぁ!
いくら私が美しいからって、また百合ですか!
ルゥイといい、メイド長といい。ちからにある人達は百合ばっかり!
私はノーマルなんです!
かっこいい男の人がいいんです!
あら、眠くなってきた。
やばい! 女神様におかされるるぅう!
・・・
・・・
・・・
すやぁあ
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