第29話

 黒っぽい竜が地面に落ちた。

ものすごく、お肉が焦げた匂いがする。

かなりのスピードで地面に落ちたので、かわいそうだけど死んだと思う。


相棒! とりあえず、よくわからんけど勝ったんだよね?

警戒すべきとか言って怖がらせてくれたけど、大したこと無くてでよかったと思う。


相棒が本気出せば強いことが分かったので、一安心である。

これからは戦闘は全て相棒に任せようと思う。


『あの竜は警戒すべき敵ではないデス。

 後、私の力は緊急時の補助的なものデス。

 何度も補助はできないデス。

 それに敵は多いです。身を守る術を身に付けないと、痛い思いをすることになるデス』


むぅ、そうなの?


『YESデス』


ま、まぁ、せっかくの異世界だし。

こつこつになるけど、強くなる労力は割くようにする。


『賢明デス』


ところで、黒っぽい大きな竜って見た感じラスボス級だと思うんだけど?


『むしろ味方デス』


味方!?

ジーっと焦げた竜をみる。

俺がやった訳じゃ無いよね!

相棒がやったんだよね!


『死んでないので、気にしなくて良いデス』


 あれで死んでないの?

じーっと見るが息してなさそうだし、焦げて真っ黒だし。

怒ったら怖そうだよな。

竜ってかなり粘着質で長生きしそうだから、恨みを買うと長い間呪われそうな悪寒がする。


『敵というのでしたら、上にいる羽を生やした人間デスネ』


上?


「魔王ぉおおおお!」


上を見ると両手に細剣を持ちネオン管のような白く光る翼を広げた少し焦げた美少女がこちらに向かってきていた。


手甲でガードしようとしたが、体が勝手にくるっと後ろを向いて何もないところに右ストレートを放った。


ちょちょと相棒!

あれ、右の拳に何か殴ったような感触が・・・


 上空の美少女が背負ってたネオン管の翼が現れ、両手に持っていた細剣が『カランカラン』地面に落ち、じわじわと顔面に右拳がめり込んだ美少女が現れた。


「く、くそぅ、ど、どうして・・・」


美少女がヨロヨロと2歩下がったので拳を戻すと、前歯は折れ、鼻が曲がっていてちょっともの凄いことになってる。


そして体が勝手に動いて前蹴りを美少女の顔面に入れるとゴロゴロと後転しながら壁に辺りピクリとも動かなくなった。


相棒・・・

お前、女性の顔面を執拗に攻撃したけど酷くない?


『最も防御が低く、効率的に無力化できるからデス』


確かにノーヘルだからもろにダメージ入ると思うけど・・・


『甘い考えを捨てないと、痛い思いするデス』


う、わ、分かった。

向こうも攻撃する気満々だった様だし、所謂テンプレで言うみんな大好き正当防衛という奴だよな。


「ルゥイ お主! 妾を殺す気かぁ」


 妾?

黒こげ竜がポン煙を出したと人型の姿にかわってふらふらと千鳥足で近寄ってくる。


相棒。 誰なの?


『ゴルドラという竜王の姪デスネ』


「ゴルドラ、悪かっ、た」


 取りあえず少しでも煽るような言動は控えないといけないので、申し訳なさそうに謝罪しつつ、程よい大きさの胸に顔をうずめてギュッと抱きつく。


うへへへへ


『ブレないデスネ』


当たり前なのだよ!


「うんうん! 妾のことは覚えておるようじゃの!」


ゴルドラもギュッと抱き返してきたが、後頭部からアイアンクローされて、ちょっと痛い。


あれ? 嫌な予感がするのだが?


「「「アーーーンコゥw」」」


「壊れる前のルゥイに戻ったのなら、ちょとこれは見せられぬの」


 アンキモ族の声が聞こえたんだけど!


「え! なっなに!

いやぁぁあああああああ」


なんかネオン翼の美少女さんの悲鳴が聞こえる。


これはひょっとして!

アンキモ族に襲われてる!?

気になるんで見たいんだけど!


「あはは! 貴様の魔力は既に封じたのじゃ

いい気味じゃ」


「アーーーンコゥw」


「痛い!痛い! あんたなんか入るわけ無いじゃない!」


ええええ!

なにが入るの! どこにはいるの!

わかってるけど気になる!

っていうか、この焦げ竜女すげえ力だな!

首がまわらねぇ!


「痛い!痛い! いやぁぁあああああああ

あんっ@ハート」


「取ったアーーーン!!!」


取った!?

何を取ったの、想像はつくけどすげー、気になる!


ゴルドラから解放されて後ろを見ると、涙目で俺を・・・

いやゴルドラを睨む半裸の美少女さんがいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る