第27話

『MMOのキャラクターは女性の格闘家デシタネ』


 ん?

いきなりどうした相棒?


『回答するデス』


 ああ、乳の揺れ具合がいい感じなんだよ。


戦士系は鉄の鎧を着ているのに揺れるとかあり得ないし、魔法系は逃げながら戦うというスタイルが俺には合わないのだよ。


『素手デスカ?』


 手甲と脛当てをつけているな。


『了解デス。 試しに装備しますデス』


はい?


手から帯状の物体が出てきて、あっという間にMMOで使ってたものと同じ手甲と脛当てをつけていた。


相棒?


『警戒すべき敵がいますデス

 出し惜しみはせず、初手から手加減抜きで討滅するデス』


 て、敵?


相棒、俺は平和を愛するジェントルマン。

こういう時は逃げるのが最上。

三十六計逃げるにしかず。

君子危うきに近寄らず。

先人は良いこと言ってると思わないか?


『逃げるのは無理デス。

 過去に話し合いの結果、隙を突かれて痛覚耐性の強制スキル上げが始まったデス』


うわぁ・・・

えっと、元人格ちゃんがぶち切れて全滅させたのでは?


『根源となる存在は残っています。』


それって何者なのかな?


『神と名乗っていますデス』


あの・・・

入信するので許してもらえ・・・

ないよね。

痛覚耐性上げが始まるだけか・・・


でも俺は魔法も使えない雑魚だよ、神様に勝てる分けないんだけど。


『神ではないデス。

こんな時の為に力を溜めていたデス。 安心するデス。』

 

そ、そうなの?

っていうか、俺つえーできるの?


『あなたが強いわけではありません雑魚のままデス。

私が一時的に力を貸すだけでデス』


 ちょ、ちょっと! 相棒には優しく雑魚じゃないデスって言ってほしかったんだけど!

ひどくない?

 相棒の力は俺の物、俺の力は俺の物じゃないの?


俺たちずっと友達で一心同体だよね


『相手がどのような外形をしていても、迷い、躊躇、慈悲は不用デス。 それが過去に全て仇になりましたデス』


 えっと、俺のずっと友確認はスルーなの?

まぁいいか。

痛いのはいやなのでとにかく相棒に任す。


『理解が早くて助かるデス』


こういうときに駄々をこねるのが最悪だってわかってるからな。


一応言っておくけど、捕まって酷い目に遭うのは絶対回避。


あと街を消し飛ばすというのも無しで。

この二つは必須条件


『1つ目は了解デス。

 2つ目は確約はできないデス。

 そうならないように協力するデス』


 むぅ、わかった。 協力する。


「あの・・・ ルゥイ様?」


イオリが心配そうにこちらを見ている。


ここに居てもらった方がいいよね?


『そばにいては危険デス。』


わかった。


「危険、ここに、いる」


 ここにいるように伝えると、心配そうに俺を見ているのでにっこり笑った後、扉を開けて外に向かう。


▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼


「街を盾にするとは卑怯者な奴め!」


 金竜が純白の鎧に天使のように光る翼を持つ女性に向かって吠えるがるが、白い鎧の女性はニヤニヤと笑いながら豪華な装飾を施した弓で白いレーザーのような矢を金竜に向かって連射する。


 金色の竜は高速で飛行しながら上昇、下降を繰り返し回避しようとするが、いくつかは被弾し、金色の鱗が黒く焦げた。


金竜も雷のブレスを吐こうとするが、相手が巧みに街を背にする位置に移動するので反撃できずにいた。


「はぁ、本当に硬くて面倒・・・

 仕方ないわね!

 本気出してあげるわ!」


白い鎧の女性は瞬間移動で金竜より上空に移動し、今度は金竜が街を背にするようになった。


金竜は次の攻撃を躱さないよいう位置取り変えたのはすぐ理解した。

だが全力で攻撃できる好機でもあると判断した金竜は鬱憤を晴らすかの様に大きく息を吸って、全力で雷のブレスを吐いた。

同時に白い鎧の女性から眩い閃光と共に光の矢が放たれた。


▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼


 保安官の建物の中には多くの人が避難のため入っていて、怒声をあげる人や泣いている人、不安そうな顔で座っている人達がいた。


そして外からは時々轟音して、地面が揺れる。


なぁ相棒、やっぱり逃げない?


『怖いデスカ?』


 なんか本当に戦争って感じがするんだよね。

戦争を知らない世代としては、結構不安なんだ。


『感じではないデス。

 死んでしまった場合、次の復活先はカッターランドから離れたところにするので我慢するデス』


うぅ・・・。

わ、わかった。

外に出たらいいのか?


『YESデス』


 保安官の建物から出るとお城や街の外で煙が上がっている。


『共有を始めますデス

 違和感を感じると思いますが拒もうとは思わず受け入れるデス

でないと、痛い思いをするデス』


 お、おぅ。

相棒から違和感と言われたが、不快な感じは全くなく、腕や足・・・ いや体中に厨二心を激しく揺さぶる紋章というか魔力回路的なものが浮き出てきた。


相棒・・・ これは一体?

怖いけど、俺が長い間封印していた厨二心が解放されて・・・


いやいや、俺は漂う気品あふれるジェントルメン!

厨二は封印したのではなく、卒業したのだ!


『攻撃が来ますデス』


ちょっとぉ!!


・・・

・・・

・・・


上空に違和感を感じる・・・


上を見て右手を上にあげると、はるか上空に竜と天使のような幾重もの翼を持った人の姿が見えたあと、眩い閃光が走った。


「反射結界」


頭に浮かんだ言葉が口にすると街の上空に巨大な魔法陣が表れて、空から落ちてくる巨大な光の塊を受け止めて消えた。


「きゃぁぁぁあああああ!!」

「ぐがぁぁぁっぁぁぁあああ!!」


そして上空から女性の悲鳴と竜の悲鳴のような咆哮が聞こえた。






























 







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