第24話

「魔王先生バイバイーイ」


 お昼時になると、園児達は帰って行った。

どうやら全員、俺のことを先生だと思ったようだ。

やはり、俺の漂う気品と威厳が園児たちにそう思わせたのだろう。


 因みに校長先生は用事があるので、午後までこの教室で園児達と遊んでほしいと言っていたので、そろそろ戻ってくるとは思う。

ぼけーっとしていると、エプロン姿の本物の先生達が掃除や片付けを始めたので、俺も手伝っていると、イオリが教室に入ってきた


「えーっと、まお・・・ルゥイさま・・・さん。午後から受ける授業だけど、選んで欲しいそうです 」


 肉の串焼きとペンと用紙を持っていた。

多分受ける授業を記入する用紙なのだろう。

どうやら代わりに書いてくれるようなので、差し出された串焼きを食いながら、椅子に座って話を聞く。

 

 イオリが言うには植物学、木工、裁縫、錬金術、剣術や魔法と色々あるらしい。

因みにコモン語の授業もあったが、母国語欄の記載が必要だった

確かに普通の語学の授業って、現在使える言語が必要だよな。

俺の場合は日本語になるから、普通に教えてもらうのは無理な話なんだよな。


 授業によっては有料となる物もあるけど気にしなくていいらしい。

とは言え、自分で稼いだお金ではないので無駄遣いはしたくない。

慎重に吟味する必要があるだろう。


 というわけで相棒。

この美少女ボディに適正のあるジョブってあるの?


『加護や魔術的契約を必要とするものは不可デス』


そうなの?


『魔法耐性∞デス』


ああ、そうだったな。

じゃあ転移魔法覚えたいんだけど、どれがいいと思う?


『はじめての魔法基礎 超入門デス』


 さんきゅ相棒。


 相棒の提案通り魔法基礎入門に加えて剣術と料理の基礎入門をお願いした。

剣術は護身的な意味と、体力つけるため。

料理は時々現れるゲテモノ料理対策のため、食材の知識をつけるのに必要なのだ。


「同僚に言えばお城でも教えてもらえますけどいかがですか?」


「両方」


 お城で教えてもらうほうが効率が良いのかもしれないが、ぶっちゃけ外で遊びたい。

特に園児たちと遊ぶのはとても癒しになるので、学校に通いつつ、予習と復習をお城で教えてもらうのが最上だろう。


「わかりました。 伝えておきます」


 今日はもう授業は無いようなので、イオリを連れて教室を出てどこかに遊びに行こうかな。

色々買っても、支払いはイオリがやってくれるようなので、豪遊してもいいな。


まずは、買い物。

手鏡も欲しいし、異世界チックな物が沢山入る魔法の鞄はほしい。


さらに、ラグジュアリーなショップで色々買い物をする

特に換金性と携帯性いう観点で考えるなら宝石系だろう。


次は本屋だな。

今のところ娯楽が皆無だから、せめて小説とか読みたいのだ。


最後に風呂だ。

TS転生をしたのなら、当然の権利。

いや、義務として公衆浴場に行って女湯に入るべきだろう。

まぁ、まずは公衆浴場なんてところがあるのか、確認する必要があるけどな。


「魔王ちゃんチーッス」

「やっぱりルゥイちゃんだ。」


色々考えながら、教室を出るとタヌキュンちゃんとアントニオくんがやってきた。


「ヤァ」

にっこり笑って挨拶。

親しくなるには礼儀から。

無愛想な人間は嫌われるからな。


「ルゥイちゃん。 先生やってるて本当なの?」


「ン?」

 情報通だな。

今さっき園児達に先生と呼ばれたばかりなのに。

覗いてた?

いや、そんな事する必要ないだろうし。


「アントニオくんの妹のシスタちゃんが『さいきょうさいあくの魔王先生』がやってきたって言うからひょっとして思って着たんだけど。」


「子供、一緒に、遊ぶ」


なるほど。

園児の中にアントニオくんの妹がいたのか。


「へー。 そうなのか。 あと、そちらの人は誰。 友達?」

「友だち」


 イオリは身長は美少女ボディと大差ないし、見た目も幼い。

あまり畏まって話されると付き合い辛いか友達認定しておく。


「ええ! 友達ですか!」

「ショック・・・」


 速攻拒否されそうなので、orzポーズを取って、ものすごく傷付いた事をアピールする。

相手の良心と罪悪感を刺激する事で良い回答をするように促す。


「うぇ、いや、えーっと。 友達って言ってもらえて、嬉しいです。」


クックック。 ちょろいな。

羊のメイドさんはみんな事務的な感じがするので、仲良くしゃべれる相手が欲しかったのだよ。


「私、タヌキュン。 よろしくね」

「俺アントニオ。 よろしくな!

ところでどこの学校?」


「あはははは・・・ 

私、君達よりずっと年上なんだけど・・・」

 アントニオくんがタヌキュンちゃんとイオリを交互に見て比較している。

体型的にはタヌキュンちゃんの方が圧倒的に女性っぽいからなぁ。

特に胸とか腰とかお尻とか。


「あはははは。 本当なの?

歳はいくつかな~?」


「嘘、年下」


 アントニオくんの容赦ない質問に俺の余計一言を追加して、ニヤニヤ笑いながらイオリを見る。


これからの通学のお供は君に決めた。

すまないが、タヌキュンちゃん達と一緒に遊ぶ上で年上のプライド的な物は邪魔なので砕いておきたいのだよ。


「えっと。 どっちなの?」


「あはははは ごめんなさい。 と、と、と・・・くっ! 年下・・・です・・・」


 イオリがとても悔しそうに年下であること認めた。

本当は同い年という設定良いんだけど、なるだけ嘘はつきたくなかったので諦めたまえ。


「ああ、なるほど・・・ 俺の妹も子供扱いするなってうるさいんだよなぁ」

アントニオくんが生暖かい目つきで涙目のイオリの頭をなでている。


「ああ、そうだ。コンタの奴も居るんだ。」


アントニオくんが手を振ると昨日にいじめっ狐がやってきた。


「ま、ま、ま、魔王様! 昨日は本当に申し訳有りませんでしたコン!」


そして深く頭を下げて謝罪。

魔王様?

タヌキュンのパンチが相当頭に利いたのかやけに素直だな。


「どうしたの?」


「昨日、保健室から戻ってきてからずっとこの調子なんだよ」


 保健室?

ああ、ひょっとして、昨日の保健室のやり取り見てたのかな?

気づかなかった。


 結局、このあと、五人でご飯を食べに行ったあと解散した。

終始、コンタは俯いて静かに飯を食っていたので、ちょっと可哀想だった。


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