第23話

 ミリアさんを一つ目の塔と言うところまで衛兵さん達と一緒に連行。

塔の最上階にある部屋を確認したところかなり豪華な部屋だった。

金の装飾を施された黒い壁、格調の高そうな調度品に絵画。

ベットはキングサイズの天蓋付き、風呂まであった。

牢屋とか言っていたので、少し不安があったが、合格である。

と言うか豪華すぎるくらいだ


 ちらっとミリアさんの方をむくと、あからさまに目を逸らされた。

やっぱり怒っているようだ。

自分もちょっと苛立ってるのは分かるので、少し落ち着く必要が有るだろう。


こんな時は、ぱーっとお金を使って豪遊するしかないな!

とはいえ、軍資金はこの前もらった、500円玉と同じ大きさの銀色の硬貨が5枚だけ、末端価格にして2500円程度と見た。


足らぬ・・・


とりあえず、豪華な装飾を施した手鏡があったのゲットしておく。

これ、持ち出して売ったら、結構なお値段になるんじゃないかな?


「魔王様、その手鏡をどうされるのですか?」

 ちっ! 早速、羊のメイドが問い詰めてきた。


「これ、売って、お小遣い」


「はい?」

 羊のメイドさんの目が点になっている。


 俺はつまらない嘘はつかない。 この城は元人格ちゃんの持ち物。 つまり俺の物。

俺の所有物をどうしようが自由なのだ。

衛兵さんたちも、ミリアさんまで目が点になっているが、悪びれる必要はない、当然の権利を行使するだけだ。


「売る、店、教えて」

 ミリアさんの鞄を抱えている背の低い羊のメイドに買い取ってくれるお店を聞いてみる。

この羊のメイドさんは服屋さんの店主。 当然、町の中は詳しいはずだから、中古品の買い取りを行っている店を知っているはず。


「あ、え、あの・・・ ちょっと、どうするんですか!」

 隣で目が点になっている、羊のメイドさんを肘でゲシゲシ殴っている。


お店を教えればいいだけなのに、すごく困っているな。


解せぬ・・・


「魔王様。 その手鏡は私のほうで買い取らせていただきますが、何か購入されるのですか?」

 再起動した羊のメイドさんが、ニコニコと笑いながら、買い取り申請を出してきた。

まぁ、誰が買い取ろうが、俺としては全く問題はない。


「遊ぶ」


「遊ぶ・・・ それで魔王様はおいくら必要なのでしょうか?」


 とりあえず、5万円くらいは欲しいな。


「これ、百枚」

 銀色の硬貨を見せながら答える。


「100枚となりますと、かなりの重量になります。 

どうでしょう、このイオリをお供に付けていただければ、支払いはこの者がすべて行わさせていただきます」


 ふむ、、確かに、この硬貨は見た目のわりに結構重いんだよな。

100g近くあるから、10キロか・・・


「それで良い」

 仕方がないので、手鏡を羊のメイドに渡そうとすると、両膝をついて、仰々しく両手で受け取った。


大げさすぎる気がするが、そういうものなのだろうか?

そういえば、この背の低い羊のメイドはイオリというのか、覚えておこう。


「学校、帰ったら、話」

ミリアさんに学校に行くことを告げたが、じーっと手鏡を見ていた。


手鏡がほしいの?

学校が終わったら買いに行こうかな。


とりあえず、学校に行ってコモン語の勉強である。

欠陥バグだらけの言語理解はなるだけ早く卒業したほが良いと言うのはわかったからな。


「警備、厳重」

 魚と牛の衛兵さん達と鳥の衛兵さん達が塔の警備にぞろぞろ現れてきたので、警備を厳重にするように伝えて、学校に向かうことにした。


▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼


イオリと一緒に羊の服屋さんを経由して、学校に行くと既に授業が始まっていた


「さ、昨日は大変、ご、ご迷惑をおかけしました、ですじゃ」


 校門の入口で待っていた校長先生がとても丁寧に深くお辞儀をするので、対抗するように俺も「おはよう、ございます」と挨拶をして深くお辞儀をする。


ガンダ・ウルフ校長先生はやはりビビりすぎではないかと思う。


 校長先生が案内してくれた、読み書きが出来ない移民用の教室というのはタヌキュンちゃんの居た昨日のクラスとは少し離れたところにあった。


相棒、言語理解を止めて勉強したいんだけど、オン、オフの切り替えって出来るよね?


『可能デス』


どうやって、止めるの?


『止めたいと思ったら、そうなるようにしますデス』


うむ、便利だな


「校長」

 校長先生を呼ぶと、ビクゥと驚いた後、背を伸ばしてこちらをみた。


 全く話すことが出来ない外国の子供だと思って授業するようにと伝えた。


「わかっています」とコクコクと頷いているので、大丈夫だと思うが心配だ。


そして、案内された教室はとても幼い人間と獣人の子供達がキャーキャーと遊んでいた。


多分、幼稚園ぐらいだろうか。

移民用のクラスじゃないのか?


「みんなー 新しいお友達だよー!」


エプロン姿の女性の先生が声を上げると、ワラワラと集まって来て、キラキラした目を俺を見ている。


し、仕方ないな!

静かなデビューをしようと思っていたが、もう一度あれをやろう!


・・・

セリフ準備中

・・・

「我こそは最凶最悪の魔王 !・・・【略】・・・」


結果、大好評であった。

エプロン先生はパチパチと手を叩くと、園児達は「おーーー!」と声を出して感動している。


どうやら、クラスに溶け込めそうだな!


『幼い子供と一緒のクラスですが、特に気にしてないようデスネ』


ん? 特に気にならないな。

むしろ癒やされる。


『そうデスカ』


 子供達と一通り遊んだ後、校長先生から直々にコモン語の授業を受けた。


言語理解スキルがどういう物かすぐわかったようで、全く言葉が喋れない人向けのカリキュラム、つまり絵を見せてゆっくり発音するなど、俺でもなんとかなるレベルの授業なので、とてもわかりやすかった。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る