第22話

「衛兵エ!」


「モゥ?」

「ギョギョ!!」

「ヒッヒーン??」


 俺が衛兵を呼ぶと、いつもの衛兵さん達が現れた。


「逮捕」


 そして、ミリアさんを指差してタイーホを指示する。

国に帰る? 脚下に決まっているのである。

もちろん逃げ出さないように軟禁する。


大切な人は、安全で常に目が届くところで置いておくべきなのだ。


特に吸血鬼になった人間が頭に聖という文字がある国に行くなんて、テンプレ的に危険極まりないからな。


「な、なに!?」


「よくわからないけど、逮捕だモゥ」


 ミリアさんも衛兵さん達も戸惑っていたけど、牛の衛兵さんがガシッとミリアさんを捕まえて、魚の衛兵さんが慣れた手つき縄でぐるぐる巻きにしたあと、ケンタウロス的な馬の衛兵さんの背中にポイと放り投げた。


 実に手際がいいな。


 特に魚の衛兵さん縛り方、股間を通したり胸を上下を強く縛って強調するようなちょっといやらしいな・・・


「ちょっと! いきなり捕縛って酷いわね! 話を聞きなさいよ!」


「動くとドンドンきつくなるんだギョー」


 かなりのドSなのかな? 魚の衛兵さんはとても邪悪な笑みを浮かべている。

確かにミリアさんがジタバタするたびに目に見えてきつくなってるな。

特に股間と胸の上下が明らかにきつそうだ。

チェインメイルだからプレートメイルと違って縄が食い込んでいくんみたいだな。


ちょっとドキドキする。


 取りあえず落ち着くために、椅子に座って気品溢れるジェントルマンのようにコーヒーを一口する。


「ちょっと! 魔王! この陰湿な魚人なんとかしなさいよ!」


 ミリアさんは魚の衛兵さんの忠告を無視して、暴れるので、ドンドン縄が食い込んで言ってる。


「やっぱり大性豪だギョ、縛られて気持ちいいんだギョギョギョギョ」


「痛いのよ! この変態魚!」


 ふむ、ちょっと面白そうだから、ちょっと様子を見よう。

魚の衛兵さんは馬の衛兵さんの背中ミリアさんのお股間に顔を近づけて何度も深呼吸・・・


「やっぱり発情してるギョギョギョギョ!!」


 そ、そうなのか・・・

魚の衛兵さんって、ちょっと容赦なさすぎで怖いな・・・


だが、これはいい!

縛った後の言葉攻めとか、ぞくぞくするわぁ。


「この変態! 発情なんてしてないわよ!」


 ミリアさんは真っ赤になって怒っている。

でも、元ヴァルキリーでしょ!

やっぱり女騎士感もりもりのジョブだからこういう羞恥プレイとの相性がいいんだよな!


「ギョギョギョー! これから拷問部屋で楽しい監禁拷問だギョー!」


は? 監禁? 拷問?


「あんまり酷いことしたらだめだモゥ」


「ちょ、ちょっと! 拷問なんて冗談でしょ! 魔王! 助けて!」


 さすがに拷問とかダメだな。 言葉攻めまでにしてほしい。

とりあえず、ミリアさんを安心させるため、大きく頷く。


ところで相棒、軟禁って言ったのに、どうして監禁、拷問って話になってるの?


『コモン語に変換した時、うまく発音出来なったようデス』


は? また言語理解? 


『言語理解スキルは常に最適化が行われています。 一時的なものデス』


それって、バグじゃない? いや、バグだよね!


『バグも仕様デス』


おい・・・


「ま、魔王様、お飲み物が・・・」


 あ、コーヒーめっちゃこぼしてた。

バグも仕様という爆弾発言で意識が飛んでたみたいだ。


「ナ・ン・キ・ン! 拷問ゴダメ」


 落ち着こう、大きな声でゆっくり話す。

俺はバグには屈しない、運用でカバーして見せる!


「ギョ?」

「モウ?」

「ヒッヒーン!」


「え! 拷問だめなのかギョ?」


 拷問は当然だめだけど、軟禁もね! そっちも大事だよ!

おれが頷くと、魚の衛兵さんのキラキラしていた目が、死んだ魚の目に変わった・・・


この魚の衛兵さん、気に入った! おもしろいわ!


はぁ、でも疲れるわぁ、主に言語理解のせいで!


「じゃあ、地下の牢屋へ連行だモゥ」


おい・・・ なぜ牢屋になるんだ? 牢屋って監禁だろ?


「ちがう! 綺麗な部屋、閉じ込める、後で、話、する」


「それなら特級拷問部屋だギョ、綺麗だギョ! 尋問もできるギョ!!」


「確かに、いつも綺麗に掃除されているんだモゥ。 そこに連行だモゥ」


「ヒッヒーン」


もう、いや・・・


「魔王様はひょっとして、軟禁と仰られていたのですか?」

 羊のメイドが恐る恐る聞いてきた。


 まさにその通りなので、にっこり笑って大きく頷く。

羊のメイド、グッジョブである。


「では、『一つ目の塔』の最上階にある部屋に入っていだたきましょうか?」


「どこ?」


 どこにあるのか聞くと、羊のメイドさんは窓に移動して、中庭を挟んで右手に見える塔を指さした。 

ちなみに左にも同じ塔が見える。


「魔王様。 ミリアの荷物どうしましょうか?」

 背の低い羊のメイドが大きめの鞄と槍などの装備品もって扉から入ってきた。

ミリアさんの鞄は荷物が一杯みたいで、パンパンである。


へぇ・・・。

帰る気満々なんだ。


「ミリア」

 俺がミリアさんを名前を呼ぶと、彼女を乗せて部屋の外まで移動していた馬の衛兵さんが立ち止まった。


「な、なに?」


「帰る、準備、終わってる?」


「ええ、終わってるけど?」


「そう・・・」

 なんか、すごく腹が立つな・・・


「ま、魔王様、ちょっと落ち着いたほうがいいと思うけど」

 背の低い羊のメイドが、青い顔で一歩、二歩と下がっていく


 あ、やばいな、あのアホ上司の顔を思い出すときより怒ってるわ。

落ち着こう。


「絶対、認めない」

深呼吸を何度も行った後、はっきり国には返さないと伝えた。




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