第5話
気がつくと、先ほどのテラスの床に裸で倒れていた。
周りはもう薄暗い・・・ 結構時間が立ったのかもしれないな。
『再生に時間がかかりましたデス。 今は翌日の早朝デス』
毎度、毎度すまんのう。
ところで着ていた服と一緒に再生とか出来ないの?
『不可デス』
うーん、この復活方法だと装備品とか全部失っちゃうじゃないか。
ネットゲーなら有り得んパターンだな。
実は意外とハードモードかもしれない。
「ステータス オープン」
・・・
・・・
・・・
反応ないな。
相棒、ステータスって見れない?
『あなたの考えているようなものは無いデス』
えー、じゃあレベルとかあるの?
軽く石ぶつけたあと、部下に魔物倒させて、楽をしてレベルアップしたいんだよね。
『そのような方法で強くなることはありませんデス。
レベルが上がった結果、強くなるのではなく、鍛錬を積み重ねることで強くなった結果、レベルが上がった事になるのデス』
うぇ。 ガチのハードモードか。
あ、でも初期スキルってあるんだよね?
どんなスキルが有るのかな?
『喜怒哀楽デス。
怒りによる破壊、
喜びによる創造、
悲しみによる再生、
楽しみによる繁栄デス』
うん。難しいな、さっぱり意味も分からないんだけど?
『分かりやすいのは怒りによる破壊デス』
ああ、昨日の豚顔コックさんの時に使ったやつね。
『魔耐性は常に∞デス』
そうなの?
『魔法、魔術等による影響は基本的に受けないデス』
お、対メイジ戦無双か♪
『あとは言語理解など日常生活に必要なスキルデス』
ふーん。
喜怒哀楽にチート臭がするな。
後はおまけという感じか・・・
後さ、元人格ちゃんは結局、どうなったの?
世界の終わりまで一緒みたいな事を言っていたけど、消えちゃう事はあるんだよね
『YESデス。
遠い未来、あなたは選択する事ができる可能性がありますデス』
ん? 何を選択できるの?
『不明デス』
ふーむ。
つまり、元人格ちゃんは相棒の知らない何かを選択した結果、消えたということかな?
『YESデス』
なるほどね、取りあえず、浴場まで服を取りに行こうと向かっていると、羊のメイドさんが走って水着マントを持って来てくれた。
「賊はアレクサ様が捕らえました。」
は? 転移で逃げるんじゃ無かったのか?
どうして捕まるわけ?
「女は?」
「賊と共に処分するそうです。」
おいおい・・・。
「案内」
「畏まりました」
羊のメイドさんに案内された大きな部屋は、艶々の大理石の床と壁。
天井は青い空に真っ白な雲が描かれ、ミラーボールがキラキラと回りながら輝いている。
部屋の中はとても酒臭いく、お酒を持った大量の黒バニー達がアレクサの周りで酒盛りをしているようだ。
ここはキャバクラか?
ミラーボールの下には直径1メートル位の金属製の柱があり、そこに猿轡を咥えた全裸男が抱きつくように縛られていた。
「あーはっはっ!」
パシーーーーン!
パシーーーーン!
「ぐわぁああああああぁぁ♪」
アレクサが涎をたらしながら、見覚えのある全裸男の背中を鞭で叩いている。
気のせいだと思うが、全裸男の叫び声に悦びが混じっているような気がする・・・
どうやら、特殊な性癖に目覚めたのかもしれない。
まずは体を引きちぎられた恨みはまだ晴らしていないから、アレクサは一度シメなければいけない。
取りあえず荒ぶるエンジニアの幻の右を放てば勝てるはず。
アホ上司の顔とあのアホの所業を思い出す・・・ キタキタ
「あ! 魔王様ぁ」
アレクサはとても嬉しそうな顔で鞭を片手に、俺の前に駆け寄ってきた。
負のオーラがドクドクと出ているはずなのに、全然気にしていないようだ。
どうも殴りにくいな。
「人間、女、解放」
とりあえず、美少女ボディの首を蹴り飛ばした光学迷彩ローブ男はどうなってもいいが、皿の上の美女の処分はさせない。
素直に返すなら許してやろう。
俺は寛大だからな!
「あ、ちょっと待ってください♪」
アレクサがパンパンと両手を叩くと、黒バニー達は巨大で半透明な球状の物体を運んできた。
あの球体はなに?
『スライムデス』
中を見ると、真っ赤になって悶えている皿の上の美女がいた。
さすがにこれは窒息しているんじゃないか?
「人間、殺す、だめ」
「はい? あー、大丈夫ですよ♪ 魔王様のお気に入りみたいだから、体の中と外をきれいに浄化しているだけです♪」
んん? 体の中まで浄化をしているのか?
「あは♪ あの娘、またイッたみたい♪」
イッた?
スライムの中にいる皿の上の美女は恍惚の表情でのけぞった後、激しく痙攣を始めた。
なんか、すごくいやらしい・・・
ちょっとムラムラするんですけど!
スライムから吐き出された皿の上の美女をみると体の色々なところから半透明な小スライムがうようよと出てきてた。
「うぅ・・・ もうお嫁にいけない・・・」
おお! やっぱりこのスライムさんにお嫁に行けなくなるような事をされていたのか!?
ちょっと好奇心が・・・
「あ、魔王様はダメですからね!」
皿の上の美女に近づこうとした俺を制止したあと、アレクサは俺の心の見透かしたようにスライム使用不可を言い渡してきた。
「む・・・」
べ、別にちょっとだけ気になっただけだし!
俺、スライムプレイなんてしたいわけじゃないし!
「ああ、レムヲン・・・。 今助けるわ・・・」
皿の上の美女は、立ち上がってふらふらと、さっきまで鞭を打たれていた全裸男の方に向かって歩き出した。
「魔王様! あの準勇者、気に入ったのでお持ち帰りいいですか♪」
あいつ、勇者だったのか。
エッチなことをしている時に邪魔されるという、嫌な予感が当たっていたようだ。
「だめ、二人、解放」
「ええ! でも、もし彼が私のお持ち帰りを希望するのならいいですよね?」
むぅ、まぁ、鞭打つ相手と一緒にいたいなんて普通思わないが、目覚めてそうなんだよな・・・
とりあえず、コクリと頷いた。
アレクサは嬉しそうにパチンと指を鳴らすと、黒バニー達はレムヲンを縛っていた鎖を外すと、すっと二人から離れた。
解放するという話が聞こえていたのだろう、皿の上の美女は驚いたように俺を見た後、解放されたレムヲンに「ごめんね、ごめんね」と泣きながら抱きついた。
まぁ、魔王の居城まで侵入してまで助けに来たし、再会時の涙の接吻を見たから、恋仲なんだろうな、うらやま、けしからんが二人は無事に国に帰って幸せになってほしいと思う。
「怪我、治して、「はなれろぉぉお!! クセエんだよぉぉおおお!!!!」・・え!?」
「きゃぁぁぁあああ!!!」
レムヲンは皿の上の美女を蹴り飛ばした。
ええ!? どういうこと?
「ふふふ、あはははははは♪ 残念!
ミリアちゃんだっけ! レムヲン君は私と昨日一晩中いいことしていたの♪
私、多分、できちゃった♪」
「う、うそ・・・」
皿の上の美女、改めミリアさんは呆然としている。
もちろん、俺も呆然としている。
「魔王様! 約束通り本人も希望しているのでレムヲン君は私の15番目の夫として黒ウサ郷に連れて帰りますね!」
えっと、確かに本人が望むならそれでもいいのかもしれないが・・・
いやいや、おかしいだろ!
「あ・な・た♡ 黒ウサ郷に着いたらぁ、私の娘たちも相手してあげてね♪」
「ああ!勿論だとも!」
アレクサとレムヲンの話を聞いていた、黒バニー達が黄色い歓声をあげた。
黒バニー達に囲まれて、にやにやとだらしなく笑っている全裸男を見ると、むかむかと怒りがこみあげてくる。
相棒・・・
『なんデスカ?』
この男、何でバラバラに引きちぎられてないの?
15番目の夫でどういうこと?
この黒バニー達はアレクサの娘なの?
黒ウサ郷とやらで、全員とエッチなことする気なの?
なんでアレクサは妊娠しているって、1日も経たないうちにわかるの!!
大体、ミリアさんの事を助けたくて魔王の居城まで侵入してきたのに、なんでこんなにあっさり裏切れるの!!!
処刑予定のこの男が黒バニー達とハーレムなんて・・・・。
おかしいだろぉ!!!!
俺にはもう、羨ましすぎて何が何だか、わからねぇ!
『落ち着くデス。 まず黒兎人はオスがいないデス。 そして強力な魅了能力を持っているので、各種族の男性に対しては最強の存在なのデス』
つまり、ミリアさんの彼氏は魅了されているだけ?
良かったぁ、魅了を解除したら大丈夫なわけね。
『黒兎人の魅了は解除不可デス』
魅了の魔法なら、解除できるでしょ?
『魔法ではなく、ガチなのデス』
ガチ? えっと、自然に本気で好きになるということ?
『YESデス』
全く、よくねぇわ!
「魔王様! 私、産休を取らせていただきます!」
くっ! 令和日本で生きていた俺は昭和時代のように産休を拒むわけにはいかない。
ムカつくから解雇なんて理性が許さない。
「むぅ・・・ わかった」
仕方がないので、認めることにする。
「ふふ、あの女いい気味・・・ ミーちゃん! スライムちゃんを肥溜めにもどしておいてねー♪」
アレクサはミリアさんを睨みながら妖艶な笑みを浮かべてレムヲンと一緒に消えてしまった。
これが転移魔法か・・・
ところで肥溜め!?
『スライムは汚物の浄化に使われているデス』
「うぅぅ・・・ おおおぅぇ!!」
ミリアさんのすすり泣く声が嘔吐に変わった・・・
これは、ひどすぎる・・・
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