16.ONE PEACE FILM RED
10月から期間限定の再上映が始まるそうなので、見た後に書きかけだった文を完成させました。
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ガンダムとセーラームーンが戦っている!
この映画を見ていて浮かんだ言葉です。
『STAR DRIVER 輝きのタクト』というアニメをご存知でしょうか。『銀河美少年』と言えばああ、となる方もおられる事でしょう。そのアニメのムックの中で、脚本、シリーズ構成の榎戸氏が語っていた言葉です。
それは五十嵐監督と共に、制作会社となるボンズとの打ち合わせを行った時のこと。ボンズのスタッフさんが「このロボットは何で動くんですか?」と聞いたのに対して、監督は「アニメーターさんが絵に書いて」と答え、相手が困惑してるのを見て、そう思ったとの事です。
ボンズはガンダムを作ったサンライズ(現バンダイナムコフィルムワークス)から独立した会社であり、そのスタッフさんはロボットの動力源などについて聞いたのでしょう。一方、五十嵐監督や榎戸氏は東映動画(東映アニメーション)にて経験を積んできました。
きわめて大雑把にまとめると、『理屈より絵』の東映動画、『理屈が合ってこその絵』のサンライズという、二つの文化の違いが目に見えた瞬間だった訳ですね。
(ちなみに東映アニメ制作が多いジャンプの漫画でありながらボンズ制作のヒロアカを見る度に、「セーラームーンとガンダムの間に出来た子供だ」って思います)
この映画(FILM RED)では、映画オリジナルのヒロイン、ウタが登場します。ストーリーからキャラクターデザインまで原作の尾田栄一郎氏が主導した(そもそも彼女の存在自体が尾田氏の意向だったとの事)ので、それはサンライズ文化の産物ではない訳ですが。
谷口悟朗監督はコードギアスなどでよく知られ、サンライズとの仕事が多い方です。
尾田氏も触れておられますが、実はTVシリーズより前、最初のワンピースアニメを監督されてます。
とはいえ今までのワンピース客層とは異なる人達を主に惹きつけてきた方に違いありません。
本作中、いつもの調子のワンピースキャラ達が敵も味方も、いつものように思ったことを口に出し、100%本気で怒り、笑い、戦っている。少年漫画の、そして東映アニメーションが続けてきた漫画映画の表現です。
対してウタは、本音を隠し、眼を伏せて逸らし、苛立ち、睨み上げ、見捨て、絶望したりするのです。ルフィが壁を突破して差し出した救いの手も、彼女は手遅れと払いのけます。
まさにガンダム以降の、中高生より上の年齢をメインターゲットとしたアニメ(控えめな表現)が磨き上げてきた表現です。
正直、かなりこの作品世界の中では異質でもあります。キャラは間違いなく尾田先生のものなんですが。
作画でも、異質かつ優遇されている感じがします。彼女のライブシーンとクライマックスのアクションシーン以外だと作画は普通というか、時々テレビシリーズレベルになったりするところもあり、某監督が「あんなのでいいのか?」と言ったのの一端はこれでしょう。
まあ、ウタはこの映画でのヒロインだから当然ではありますが。そういや映画が大好きなポンポさんも、「映画は、ヒロインが魅力的に撮れればいいんだ」って言ってましたっけ。
ライブシーンは、『東映アニメでもこんな絵が出るんだ!』という新鮮な驚き。ウタの歪みや病みっぷりもまた、東映土日アサアニメとしてはかなりの異物感がありました。ま、それがいいんですけどね。
ちなみに、『ほとんどPV』なんていう意見も時々見ましたが、フルに流れるのは一曲目とラストシーンの曲、エンディング。他はほぼワンコーラスだし、戦闘などストーリーと絡みながらですから、PV的なシーンはせいぜい五分くらいだと思います。
また、楽曲の多くが別々の作詞作曲である事で、一曲ごとの雰囲気が全く異なるため、飽きることもありませんでした。
ストーリーの中で『インパクト重視で辻褄をやや無視したのでは』と思える所はありますが、元々歌とアニメの組み合わせが好きな人間ですから、その時点で好意的である事は確かですが、私はこの映画が好きです。再上映、また劇場へ行きます。
手動感想機 ~ワニのゆる語り~ 和邇田ミロー @wanitami
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