8.デザストと剣斬(仮面ライダーセイバー)(その3)
さて本編。
デザストに斬りかかられ、床の水たまりに転げ込み、這いつくばって逃げる蓮。
公式ブログによると、お世辞にもきれいな水とは言えなかったそうですが、それも構わずに水しぶきを上げながら逃げ回る富樫慧士君の演技は、鬼気迫るものがありました。
追い詰められて死を覚悟した時、かつてデザストが言った言葉が脳裏をよぎります。
『強さの向う側を、見せてやるよ』
次の一太刀をかわし、剣斬に再変身して立ち上がった蓮。
「俺の全存在を賭けて、お前を倒す!」
ここで歌が流れ始めます。歌うはヒロイン須藤芽依を演じる川津明日香さん。あの賑やかな(敢えてうざいとは言わない>言ってる)芽依からは想像の付かない透明感のある声。これから二人で生きて行こうと語る歌詞。
ごめんなさい。私は歌が流れるドラマチックなシーンに弱いので、もうこの歌だけでシーンへの思い入れが五割り増しくらいになってます。
蓮のセリフを聞いたデザスト。顔を前に突き出して凍り付き、そしてのけぞって笑い始めます。片手で顔を抑えて。
その甲高い笑い声は、泣いているようでもあり、歓喜の絶頂に達しているようでもあります。声優さんの声、スーツアクターさんの身体、2つの演技の相乗。
暗い工場で、デザストの背後の窓からさすまばゆい光は、まさにそのまま袋小路に陥った二人に差した光でありましょう。
戦いが再び始まります。文字通り生まれ変わったように生き生きと戦う剣斬はデザストに斬撃を浴びせます。デザストも反撃しますがさらに剣を受けて倒れ、そして笑います。
「これだよ! 生と死が混じり合い、
起き上がり、戦い続けるデザスト。
「全く、お前なんかに声をかけるんじゃなかったぜ!」
「ああ、お前となんか出会わなきゃよかった!」
言い返す剣斬。
しかし、です。それぞれのセリフの後半では、剣斬の色でもある緑の光に満ちた並木道をバックに、向かい合っていると思しき二人が、同じセリフを、優しい声で、穏やかな表情で言い合っている姿に切り替わるのです。誰が見ても、そのセリフと逆の事を思っているし、それが互いに分かっている事は明白です。
「もう会わねえよ!」
デザストが押し込み、剣斬が膝を着きますが、そこから一気に押し返し、両党を頭上に構えフィニッシュ体勢。しかし一瞬のためらい。デザストは両手をだらりと下げ、ふっと笑います。もう、「やれよ、いいから」と台詞が脳内に響いた気がします。
剣斬はためらいを振り切り、双剣を振り下ろします。デザストは倒れ、その体が分解し始めました。緋色の灰のように、それは少し紅ショウガにも似た色で。
「あーあ、つまんねえなあ、もう終わりか」
満ち足りた声でデザストが言います。身を半ば起こし、
「お前はそのままでいいんだよ。それとな」
指を剣斬に向け、
「紅ショウガ、ちゃんと食えよ」
剣斬から戻った蓮は、何かを堪えるような表情で口癖を返します。
「まじ、ないわ」
デザストは笑いながら消えていきます。
床に残されたデザストのライドブックと赤いマフラー(まるでヒーロー)を拾い上げた蓮。
「ありがとう、楽しかったよ」
デザストと剣斬の物語は、メインストーリーからやや外れた所で進行しているので、この回の残り半分は別な所で進む主人公たちの物語なわけですが、そちらのストーリーが一段落すると、カメラは再び蓮に戻ります。
屋外で、また豚骨カップラーメンを食べている彼。今度は紅ショウガも入っている麺を口に入れ、
「しょっぺえ」
その塩辛さは紅ショウガだけではなく……いや、それ以上は野暮でしょう。
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