5.さようなら、エヴァンゲリオン(その4)

 テレビシリーズのラストは、「父に、ありがとう」「母に、さようなら」「そして全ての子供たちに、おめでとう」という言葉で締めくくられました。

 今思えば、父に向かい合えず、母を送り出せず、自分を祝福できなかった少年の物語は、そこに向かうのが必然でした。それは庵野監督も分かっていたのです。

 しかし当初思い描いたストーリーではその必然にたどり着けるように思えなくなり、物語は迷走したのでしょう(いや普通に制作状況ひっ迫という事の方が大きいのでしょうけど)。

 そのセリフを強引に視聴者に告げた最終回。それはあたかも『さらば宇宙戦艦ヤマト』で「この作品のテーマは愛だ!」と断言しちゃう古代進のようなもの……いや、実際似たようなものか。まあそれはともかく。

 時がたち、新劇場版の製作に 入った後も紆余曲折を繰り返し、シト再生もとい死と再生を繰り返してついに、(Neon Genesisというタイトルまで回収し)物語の中でそれをシンジが言える、行動できる時が来たのです。それはこちらから「おめでとう!」って言ってしまいますよ。

 そして私も、解脱したような穏やかな気持ちで劇場を出たのでした。


 二度。



 そしてその後、見たい映画ラッシュの初夏、シンエヴァが「薄い本」を配布するという情報を聞いた私は、また煩悩の中に叩き落されたのでした。


 さようなら、そしてありがとう、全てのエヴァンゲリオン。


(終わり)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る