4.さようなら、エヴァンゲリオン(その3)

 NHKのドキュメンタリーで庵野監督は、ファンがネット上で監督の殺し方を話し合っているのを見て、全てが馬鹿々々しくなったと語っておりました。

 恐らく、テレビシリーズ最終回後、謎や伏線が回収されなかった事に怒ったファンの仕業でありましょう(未確認)。

 旧劇場版で、庵野監督は「お前らアニメから卒業しろ」と突き付けました。そこまでアニメに入れ込むな、好きでもない人ならともかく、俺くらいアニメが好きな人間が言ってるんだから聞いてくれよ(大意)とも。

 それ以外にも恋愛などのストレスもあったとも噂されますが、庵野監督の荒れ狂う怒りそのもののような旧劇場版は、多くの人々に刺さりました。肯定的にも、否定的にも。


 しかし時を経て庵野監督は、妻となった安野モヨコさんの作品から、フィクションが現実に生きる力となる事があると知ったとの事です。

 だからシンエヴァでは、フィクションからの脱却ではなく、フィクションとリアルの境目を超えた世界を舞台に、シンジが皆を新しい生に送り出す物語となった、のでしょう。


 それと、あの番組を見ていて思ったのですが、監督、愛されてますよね。まあ奥様からはあの漫画『カントク不行き届き』の中で、「自分の事、愛されキャラだと思ってるでしょ?」とツッコまれてましたが。

 気性が難しく、悩んでなかなか答えを出してくれない監督に、エヴァ以来の主要スタッフや、新たに加わったスタッフ達の、困惑しながらも向ける信頼の暖かい視線。

ご本人もそれは感じている事でしょう。それ故に、旧作では「みんな僕に優しくしてよ!」と叫んだシンジが、「なんでみんな、僕に優しくするんだよ……」と泣いたのだと思います。


 思えば、あの旧劇場版のラストに納得いかなかった人は多かったと思います。あるいは、『これがエヴァだから……』と自分を納得させて劇場を後にした人も。

 そうやって納得しきれないままエヴァから離れる人、あるいは妄想や二次創作を作ったり消費したりしながら延々とエヴァに取りつかれていた人々。

 この映画で送り出されたのは、そう言った思いを抱えていた人々の方だったのでしょう。

 ネット上で「成仏」という言葉がよく見受けられたのも納得です。


(続く)

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