254話 恐怖の象徴-5

「南部にある『水の街』を統治する領主だ」


「ああ、あいつか……」


 俺はポンと手を打つ。

 俺が征服した『ナタール連邦』は、小国からなる連合国家だ。

 その統治体制は各国で異なっていた。

 南部方面にあった『水の街』は、特殊な魔道具によって水運が発達している街だった。

 その特殊な魔道具は、領主一族でしか発動できない。

 だから、領主や統治体制はそのままにしておいてやったのだが……。


「ご主人、どうすればいい?」


「……? 分かりきったことだろう? 反逆者は殺せ」


 俺は当然の答えを口にする。

 レスティはぽかんとした表情になった。


「い、いや……。領主を殺したら、あの一帯に深刻な水不足が発生するぜ?。何人の民衆が死ぬか……」


「ああ、そういうことか」


 俺は理解した。

 レスティも、意外に優しいところがあるんだな。


「愚民が何人死のうと、関係ないな。そんな愚鈍な領主の下で暮らしている時点で、同罪だよ」


「なっ……!? ご、ご主人……? さすがにそれは……」


 レスティは狼狽える。

 本当に優しい奴だなぁ。

 彼女は人族から奴隷として虐げられていたし、復讐心に燃えていると思っていたのだが。

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