251話 恐怖の象徴-2

「なぁ、お兄ちゃん! そこまでにしとけよ! ルーシーの姉御が怖がってるだろ!!」


 ガルドが俺とルーシーの間に入る。

 こいつの殺処分は保留中だ。

 ルーシーに『竜の加護』を与えてから、彼女の体調は安定したからな。

 ま、代わりに精神の方が不安定になっているのだが……。


「どの口が言っているんだ。お前の存在こそ、ルーシーの恐怖の対象だろうが」


 俺はそう指摘する。

 ガルドはルーシーを強姦し、殺害したことがある。

 俺がエリクサーを作らなければ、今も死亡したままだっただろう。


「ほら、ガルドはどいてろ。俺の愛こそ、ルーシーを癒やす唯一の手段……で……」


 俺は途中で言葉を止める。

 ルーシーが俺の視線から逃れるように、ガルドの背後に隠れたからだ。


「はぁ……」


 俺はため息をつく。

 やはり、ルーシーは疲れているようだ。

 幼なじみの俺をなぜか怖がったかと思えば、強姦殺人犯のガルドにはやけに懐いている。


 明らかにおかしい。

 彼女の精神が疲弊しているのは間違いないだろう。

 エリクサーの副作用か何かかな?

 俺を怖がる理由なんてないもんな。

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