250話 恐怖の象徴-1

 俺がルーシーに『竜の加護』を与えてから、数週間が経過した。


「よう、ルーシー。元気か?」


「ひっ!? ら、ライル様……お、おはようございます……」


 俺が声をかけると、ルーシーは怯えた様子で後退る。

 そして、引きつった笑みを浮かべていた。

 そんな彼女の態度に、俺は首を捻る。


「俺とルーシーの仲なのに……。口調を元に戻してくれないか?」


 俺は王族の生まれで、彼女は平民だ。

 しかし同時に、幼なじみに近い間柄でもある。

 俺は幼少の頃、魔物狩りとかで彼女の村をよく訪れていたからだ。

 彼女は俺を『ライル様』と呼ぶ一方で、口調自体はタメ口で砕けたものを使っていた。

 にもかかわらず、ここ最近はなぜか丁寧な口調になってしまっている。


「そ、それは……ごめんなさい。でも……あの……」


 ルーシーは怯えた様子で首を左右に振る。

 何に怯えているのだろう?

 俺としては、まったく心当たりがない。

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