220話 何でもする

「頼む、殺さないでくれ!! 何でもするから!!!」


「そうは言ってもな……。『紅血の水晶石』作りには、もう役に立たないだろ。憂さ晴らしに痛めつけるのもいいが、お前に構ってばかりいる暇はないんだ。殺処分した方が後腐れがない」


「そんな……。ま、待って! 俺を殺せば、弟殺しの罪を被ることになるんだぜ……っ!」


「どうでもいいなぁ。今さら王族に戻るつもりもないし」


「いやだぁぁっ!!」


 俺は泣き叫ぶガルドの首を掴んだ。

 女体化したためか、以前よりも弱々しい首の感触が伝わってくる。


「やめろぉ! 何でもするから! ほ、本当に何でもするから!!」


「ふん、必死だな。だが、そんな命乞いが俺に通用するとでも――」


「待て、ライルよ」


 リリアが俺を呼び止めた。

 またか。

 戦争の最中にも、こんなやり取りがあった気がする。


「……何だよ? もうエリクサー試作品の実験は十分だろ?」


「うむ。じゃが、今回は少し毛色を変えてみたくてな」


「どういうことだ?」


「其奴に竜の加護を授けてみるのはどうかと思っての」


 リリアの提案に、俺は首を傾げた。

 竜の加護。

 S級スキル【竜化】を持つ俺の能力の1つだ。

 俺の体液を体内へ取り込んだ者は、身体能力が向上したり特殊な力を持ったりする。


「竜の加護だって? な、何のことは知らねぇが、それで俺の命を助けてくれるなら――ぐはっ!?」


「お前は黙ってろ。話がややこしくなる」


「な、何をするんだよ……っ! がっ!?」


 俺はガルドを殴り飛ばす。

 床に倒れた彼女を、そのまま足で踏みつけた。

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