106話 愛の結晶
俺と村長が話していたところ、少女に背後から声をかけられた。
俺は振り向く。
やはり、かつて俺が抱いてやった例の少女だな。
「おお、サテラか」
俺はさも最初から覚えていたかのように名前を呼んでやる。
実際には先ほどの村長との会話で知ったのだが、細かいことはいいだろう。
「はい。サテラにございます。私なんかを覚えていてくださったのですね……」
「勿論だとも。久しぶりだな。元気にしていたか?」
「はい。ライル様のおかげで、元気に暮らしております」
「それは何よりだ」
俺は適当な言葉を並べながら、彼女の全身を眺める。
顔つきはまだやや幼いが、体の成長は著しい。
胸と尻がひと回り大きくなっているようだ。
子どもらしさを残しつつも、女性的な魅力を感じさせる肉体へと変化しつつあった。
(ふむ。こいつは実に美味そうだ)
俺は舌なめずりする。
久々に可愛がってやるのもいいかもしれない。
だが、まだ手を出すには早いだろう。
宴会は始まったばかりだ。
「……ん? サテラ、お前が抱いているその赤ん坊は何だ?」
俺は、彼女が大事そうに抱きかかえている存在に気づく。
赤子だ。
それも生まれたばかりの、とても小さな。
「この子は私の子です」
「ほう? それは――」
俺がいない間に浮気したのか?
いや、別に俺と彼女は恋人というわけではないんだが……。
それでも、俺の所有物に手を出されたようで気分は良くない。
(いや、逆か? タイミングから考えて、他の男と彼女がすでに子作りを済ませていたところに、俺が割り込んだのか?)
妊娠してから出産までは、軽く半年以上かかるはず。
俺と彼女が致してから、まだそれほどの時間は経過していない。
しかし現に出産しているということは、俺と彼女が致すより前のタイミングで他の男が彼女に手をつけたということだろうか。
俺が疑問の声を上げようとしたところだった。
「この子の父親は、ライル様です。私とあなたの愛の結晶なのです!」
サテラは大きな声で、そう宣言したのだ。
「……なっ!?」
あまりに想定外の言葉を受けて俺は目を見開く。
「どうですか? 似ていますでしょう?」
そう言ってサテラは俺に近づいてくる。
そして俺の腕を取ると、無理やりに赤ちゃんの顔を見せてくる。
「……ッ!!」
俺は息を呑んだ。
サテラの言う通りだったからだ。
愛らしい寝顔を晒しながら眠っているその子。
それは確かに俺にそっくりだった。
薄く生えた赤い髪など、まさに俺と瓜二つである。
「俺の子だって?」
俺は呆然と呟いたのだった。
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