テスト最終日
「テスト終わったよー」
テスト最終日、全ての日程が終わったらつかさが背伸びをした。
どうやら勉強があまり好きではないらしい。
「白雪さん、これから一緒に遊びに行かない?」
速攻で姫乃に近づいてきたつかさは、頬をつつきながら彼女を遊びに誘う。
テストが終わったから遊びたいようだ。
そして女の子の頬を突くのが好きらしい。
「その……ごめんなさい。今日はこれから予定があって……」
申し訳なさそうに断りを入れる。
今日は一度帰った後に箱根に行くことになっているため、別の予定を入れられない。
テスト最終日の今日は金曜日で午前中で学校が終わりなので、土日の休みも合わせて行こうということになったのだ。
「最愛の彼氏くんとデートなのかな? 羨ましいね」
このこのぉ、と再び頬を突く。
「いえ、その……新婚旅行、です」
「……はい?」
恥ずかしそうに口にした姫乃を見て、いつも元気なつかさは訳が分からなない感じで首を傾げる。
いきなり新婚旅行って言われたら誰だってそうなるだろう。
「これから新婚旅行に、行きます」
あう、と恥ずかしそうにしている。
確かに新婚ごっこをしているから新婚旅行の体だが、そのことをきちんと言ってほしい。
「……なんですとおぉぉぉぉ?」
耳を塞ぎたくなるほどに大きい声だ。
箱根に行くことを麻里佳に伝えた時も同じような反応だった。
新婚ごっこだというのと商店街の福引きで当たったことを伝えたからことなき事をえたが、学校だと噂に尾ひれが引いて週明けには色々と広まっているかもしれない。
そもそも結婚出来る歳ではないのだし、少し考えれば新婚ごっこだと気づく人たちもいるだろう。
「ついにバカップルを越えて結婚を……」
どうやらつかさは気付かないらしい。
「俺はまだ十六だから結婚出来ないよ。福引きで箱根旅行に当たったから行くだけ。まあ新婚旅行の体だね」
きちんもフォローを入れておかないと変な広まり方をするだろうから口出しさせてもらった。
それにつかさにはきちんと説明しておかないと、本当に結婚したんじゃないか? と思われてしまいそうだ。
「そっか。ビックリしたよ」
真相を聞いてつかさは胸を撫で下ろす。
「でも、将来結婚する気満々なんだね」
確かに新婚旅行の体とはいえ行くのだし、将来結婚する気だと思われても仕方ないだろう。
「あう〜……」
結婚というワードで出たためか、姫乃は頬を真っ赤にして俯く。
新婚旅行と口にしたのは姫乃なのだが、実際に結婚など言われると恥ずかしいようだ。
「た、タカくん……」
まるで助けを求めているかのように手を繋いできた。
同性の友達は出来たとしても、こういったワードが出れば対応出来ないらしい。
「姫乃は恥ずかしがり屋だからほどほどにしておいて」
彼氏、夫役である隆史がフォローを入れる。
恥ずかしがっている姫乃は見てて可愛いが、助けを求められてはしょうがない。
「そうみたいだね。可愛いなぁ」
どうやら同意見なようだ。
「ほら、姫乃」
「あ……」
恥ずかしがって俯いている姫乃を優しく抱きしめ、自分の胸に埋めさせる。
人前でするなんて物凄く恥ずかしいが、バカップルとして見られないといけないから我慢しなければならない。
「流石はバカップルだね」
ヒューヒュー、とつかさからの冷やかしが飛ぶ。
さらに恥ずかしさで身体が熱くなっていくのを感じるものの、何を言われても離したくない。
ずっとずっと姫乃をこの手で掴んでいたい、と本能が訴えかけている。
「姫乃、箱根に新婚旅行に行こうか」
「は、はい……」
冷やかされながら手を繋いで教室を出た。
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