白雪姫との新婚ごっこは破壊力抜群
「テスト疲れたよ」
中間テスト一日目が終わった後、隆史は姫乃と一緒に買い物をした。
冷蔵庫にあった食材が無くなりそうになっていたために、スーパーで数日分の買い出しをしたのだ。
買い物は基本的に麻里佳がしてくれるが、弟離れさせたいので自分で行った。
「後二日もありますね」
ふふ、と姫乃は笑みを浮かべる。
確かにまだテストは終わっていないため、疲れたと言うには早いだろう。
でも、疲れてしまったものはどうしようもない。
今日のテストは苦手な英語があったのだから。
「気晴らしに福引きしよう」
買い物をしたら福引き券をもらったため、商店街の端っこの方で福引きをすることが出来る。
どうせ全部参加賞的なティッシュだろうが、せっかく福引き券を貰ったからやらないと損だ。
「ふふ、そうですね」
手を繋ぎながら福引き会場へと向かう。
「はあぁーい。参加賞のティッシュです」
少し歩いたところでそんな声が聞こえてきた。
先に福引きをしていた人は参加賞のティッシュだったようだ。
当たりなんてそう簡単に出るわけがないし、こういったのは運だからしょうがない。
ここ最近は姫乃と出会って甘い日々を過ごしているから隆史の運は尽きかけているかもしれないが、何となくやりたい気持ちになった。
「特賞で箱根旅行か……」
掲示板にはそう書かれている紙が貼ってある。
どうせなら海外とかにしてほしいが、こればっかりは文句を言ってもどうしようもない。
商店街の予算から出ているのだろうから、予算には限りがあるはずだ。
最近は色々と不況の世の中だし、特賞が箱根旅行でもしかたないだろう。
「福引きお願いします」
買い物の時に貰った福引き券を渡す。
三千円以上の買い物で十枚貰えたので、十回することが出来る。
「どうぞ」
福引き券を渡すとガラガラを回すように言われたので、隆史は深呼吸をしてから回す。
「案の定ティッシュか……」
最初の一回は白色の玉が出てきたため、参加賞のティッシュだ。
ほとんどが参加賞だろうし、特賞などが出るのはないだろう。
「一緒に回しましょう」
ガラガラの取っ手部分を姫乃と一緒に握ってから回す。
ふと気になって一度調べたところ、ガラガラの正式名称は新井式回転抽選器というらしい。
スマホで色々と調べられるのは便利だ。
「おめでとうございます。特賞の箱根旅行です」
ガラガラを回して出てきた玉の色は金で、商店街の人がカランカラン、とベルを鳴らした。
「箱根、旅行?」
特賞なのが信じられず、隆史はキョトンとしている姫乃を見る。
どうやら姫乃も信じられずにいるらしい。
こういったので当たりが出るのは非常に珍しいし、驚いても仕方ないだろう。
まさかの特賞で、隆史は再びガラガラから出てきた金色の玉を見る。
何度見ても金色で、先程出てきた白色とは全く違う。
「おめでとうございます。こちらが特賞の箱根旅行のチケットです」
封筒の中にチケットが入っているようで、商店街の人から渡された。
封筒を渡されたとこによりようやく実感が湧いてきたが、驚き過ぎて頭がフワフワする感じだ。
「タカくん、これはタカくんと二人で引いた特賞ですね」
耳元で甘い声が聞こえた。
「そ、そうだね」
確かに姫乃と一緒に引いた特賞であることには間違いが、ここで一つ問題が出来た。
このチケットをどちらが使うかということだ。
掲示板には二泊三日でペアと書かれているため、二人でしか行けない。
高校生だけで泊まれる旅館なのかどうかも不明だし、姫乃と二人で行くのは難しいだろう。
「ちなみにこの旅館はご両親に連絡が取れれば高校生でも泊まれますよ」
まるで心を読んだかのように商店街の人が言ってきた。
どうやら表情に出てしまったらしい。
高校生でも泊まれる旅館はあるみたいだし、きちんと確認が取れれば大丈夫なようだ。
エッチなことはしないという約束はあるみたいだが。
「私はタカくんと一緒に行きたい、です。テストが終わったら一緒にお出かけする約束ですし」
確かにそんな約束はしたし、もちろん覚えている。
「それに新婚旅行、になりますよ」
耳元で聞こえる甘い囁きは、隆史にとって破壊力抜群だった。
新婚旅旅行とは新婚ごっこのことを言っているのだろう。
せっかくしているのだし、箱根旅行を新婚旅行にしてしまおう、とのことなのだろう。
テストが終わったら箱根に新婚旅行に行くことが決まった瞬間だった。
ちなみに残りは全部ティッシュだったのは言うまでもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。