白雪姫の彼シャツは破壊力抜群

『タカくんの服を、着たいです』


 髪を乾かした後に姫乃が望んだことだった。


 一応、麻里佳にパジャマを用意してもらったのだが、今の姫乃が着ているのは隆史が中学時代に着ていたワイシャツだ。


 シャツが少し大きいから下着などは見えていないものの、白くて綺麗な太ももが見えている。


(破壊力がヤバい)


 アニメなんかでヒロインが主人公のワイシャツを着ているシーンを見たことがあるが、実際に着てもらうと破壊力が半端ない。


「あまり見られると恥ずかしい、です」


 見られて恥ずかしくなったのか、頬を真っ赤にした姫乃はワイシャツの裾を手で抑えた。


「ごめんね」

「い、いえ、タカくんになら見られても平気、です。恥ずかしさはありますけど」


 そう言われるとジロジロとガン見したくなる衝動に襲われるが、あくまで少し見る程度にしておく。


 自然と太ももに視線がいきそうになるものの、頑張って姫乃の青い瞳を見る。


 太ももを見られるより目を見てほしいはずなのだから。


(男が彼女の彼シャツが好きな気持ちが分かるな)


 少し前にネットで彼シャツが好きな人が多い、という記事を見たことがあり、実際に見ると頷ける。


 もし、好きじゃない人がいるとすれば、おかしいと断言したくなるほどだった。


 美少女が着ているからというのもあるかもしれないが。


「タカくんは私が男性物のシャツを着て、何とも思いませんか?」


 そう尋ねてきた姫乃に抱きしめられた勢いでベッドに押し倒される形となった。


 もちろん本人に押し倒す意思などなかっただろう。


「ご、ごめんなさい」

「大丈夫」


 ベッドだから痛くはなかったが、抱きしめられたから姫乃の甘い香りと柔らかい感触で理性が削られていく。


 むしろこの状態で理性が削られない男はいないだろう。


「すぐに退きますね」

「大丈夫だよ」


 好きな人の温もりをもっと感じでいたいため、離れようとした姫乃の背中に腕を回して抱きしめる。


 姫乃の体重がかかってしまうが、そんなことはどうでもいい。


「先程の答えだけど、何も感じなくないからこうするの」


 実際に言うのは恥ずかしいものの、何も言わないままではいけないから答えた。


「本当、ですか?」

「もちろん」


 こんなことで嘘をついても仕方ない。


「俺は姫乃と一緒にいると恥ずかしいことがあっても安心はする」


 ――そう、麻里佳と一緒にいるよりも。


「安心、ですか? ドキドキはしませんか?」

「しまくりだよ。今も心臓バクバクだし」

「本当ですね」


 姫乃の手が左胸に添えられた。


 言った通り、本当にドキドキしているか確かめたのだろう。


 好きな人と一緒にいてドキドキしない方がおかしい。


 もし、しないのであれば、もう何年も付き合っている熟年カップルと言われる人たちだけだろう。


「もっと、ドキドキしても、いいのですよ?」


 もしかしたら姫乃なりのアタックなのかもしれない。


 甘い囁きを聞けば聞くほどドキドキするので、姫乃の言った通りさらに心臓が激しく鼓動する。


「あまりしすぎると狼と化すから」


 今のところは理性も保たせているが、いつ崩壊してもおかしくはない。


 ただ、嫌われたくはないため、一応は釘を刺しておく。


「タカくんが無理矢理しない人だって分かりますよ。仲良くなって期間は少ないですけど、もう何回か泊まっているのですから」


 今まで手を出さなかったことで完全に信頼されているらしい。


「前は耳に甘噛みしたけどね」

「タカくんが喜んでくれるのであれば、耳を噛まれても大丈夫です」


 甘噛みしてもいいという許可は出たが、耳まで真っ赤になっているから恥ずかしさはあるのだろう。


 男慣れしていないのだし、恥ずかしくなっても仕方ない。


 むしろ慣れていない方が嬉しいくらいだ。


「他の人に言ってたら襲われてるよ?」

「タカくんだから言っているんです。他の人なら二人きりにすらなりません」


 これはもう惚れられていると確信してもいいだろう。


 特別感を持たせて、自分だけを見てほしいと思っているのかもしれない。


 姫乃みたいに真面目な性格な人が、好きじゃない人にそこまで言わないだろう。


 少し前まで気づかなかった自分が言えたことではないが。


「だから……テストが終わったら二人きりでデート、しませんか?」

「で、デート……」


 デートという言葉に隆史の心臓が飛び跳ねる。


「私たちが出かけるのはデートと言っても差し支えないと思います」


 確かに何度か二人きりで出かけているし、一緒に寝たりキスまでしてるからデートと言っても問題はない。


「そうだね。デートしよう」

「じゃあ指切りです」

「うん」


 お互いの小指を絡めてデートに行く約束をした。


 破ったら針千本と拳骨一万回の刑になるが、約束を破るなんて絶対になりから有り得ない。


 だって好きな人との約束なのだから。

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