白雪姫の想いに気付きはじめる
「どうぞ、召し上がれ」
晩ご飯の時間になり、姫乃が作ってくれた料理がテーブルに並んだ。
今日は妹のひなたと一悶着あったために一人じゃ寂しいらしく、この家に泊まることになった。
制服は持ってきてないようなので、明日の朝一取りに戻れば問題はないだろう。
「本当に美味しそう」
冷蔵庫にあったので作ったらしく、メインはスーパーで売っている安物のステーキだ。
ただ、とても良い匂いが漂ってくるため、隆史のお腹の音が鳴った。
若干恥ずかしい気持ちはあるものの、美味しそうだから仕方ない。
「いただきます」
早速メインであるステーキを箸で摘む。
顔に近づけるとさらに良い匂いが強くなり、我慢出来ずにパクっと口に入れる。
「安物なのに美味いし柔らかい」
きちんと下処理をしているのか、安物のステーキなのに蕩けるほどの柔らかさだ。
「蜂蜜につけると短時間で柔らかくなるんですよ。栄養もいいですからね」
確か料理アニメで見たことあるな、と思いながらも、隆史の箸は止まらない。
「タカくん、あーん」
ここ最近は当たり前になってきているあーんを隣に座っている姫乃はしてくれる。
もちろん姫乃からのあーんを断るわけがないため、ステーキを食べていく。
蜂蜜が下処理に使われているからか、ほんのりと甘い味もする。
「その……ん……」
何を思ったのか分からないが、姫乃がステーキを口に咥えてこちらを向いた。
「え? 口移し?」
「ん……」
コクン、と頷いた姫乃は、恥ずかしそうに頬を赤くしてこちらを向いている。
ひえぇぇぇぇ、と思いながらも恥ずかしくて身体を熱くしてしまうが、せっかく口移ししてくれるのでゆっくりと姫乃に近づく。
「れろ……」
口移しでステーキを食べたと同時に、何故か唇をペロっと舐められた。
若干エロいと感じたのは気のせいではなく、何でこんな恥ずかしいことをしてしまったんでしょう、と頬を真っ赤にしている姫乃は思っているかもしれない。
隆史からすると嫌ではないし、むしろもっとしてほしいくらいだ。
(あれ? もしかして姫乃って俺のこと好きなのでは?)
恥ずかしさなどがあってあまり考えもしなかったが、今になって姫乃の想いに気づいたかもしれない。
あの真面目な姫乃が好きな人以外にキスをするとは思えないのだから。
寂しさからキスをしてくれているのかと思ったが、そうではないだろう。
何せファーストキスだったのだから、好きな人じゃないと唇を許さないはずだ。
今回は口移しで唇を少し舐めてきたし、好きな人の温もりを少しでも感じでいたかったのかもしれない。
(これで違ってたら嫌だな)
ほとんどないかもしれないが、もし、検討違いだったら物凄く恥ずかしい。
だからまだ告白すべきではないだろう。
完全に好きだと確信してから告白し、今の関係じゃなくて本当の恋人になる。
まだ出会って一ヶ月くらいなので、もちろん勘違いの可能性はあるだろう。
でも、恐らく姫乃は隆史のことを好きだ。
この一ヶ月は本当に濃密な時間だったため、今考えたら好きになってもおかしくないのかもしれない。
実際に隆史は姫乃を好きになってしまったのだから。
(浮かれすぎてもヤバいから今は考えないようにしとこ)
もうすぐ二年生になって最初の中間テストがあるため、浮かれすぎて赤点を取ってしまったら話にならない。
だから今はあまり考えないようにし、テストが終わって好きだと確信が持てたら告白するのがベストだろう。
本当に好きだったら申し訳ないが、テストが終わるまで待っていてもらうことにした。
周りはバカップルだと思っているために、姫乃を奪おうと考えている人はいないだろう。
だから安心して好きだという確信を持てるとこまで待っていられる。
テスト勉強に集中しないといけないが、好きかどうか見極めることが出来るのだ。
(今思うと俺は鈍感だな)
何でファーストキスの時点で気づかなかったのか? と思わずにいられない。
本来であれば遅くてもキスの時点で気づけたはずで、まるでハーレムアニメに出てくる主人公以上に鈍感だ。
(すぐに告白出来ないのはヘタレだからだろうな)
本当に好きかどうか確信出来るまで告白出来ないのは、ヘタレ以外の何者でもない。
女慣れしている人であれば、好きな可能性でも告白するのだろう。
(問題があるとすればひなたなんだよね……)
帰ってくれたとはいえ、あのひなたがすぐに諦めてくれるとは思えない。
本気で姫乃から奪いたいと思っているはずなのだから。
(今度は追い返さないとね)
絶対に姫乃の側から離れたくないため、今度ひなたが来たら家にいれないことを決めた。
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