白雪姫とのバカップル度が増す
「あいつら、バカップル度が増してないか?」
ゴールデンウイークが終わった次の日、姫乃と共に教室に入った隆史の耳に入ってきた言葉だ。
いつも通りに手を繋いでいただけなのだが、クラスメイトからするとバカップル度が増したらしい。
「ま、まさかゴールデンウィークの間に大人になったんじゃ……」
一人の男子がこの世の終わりが来たんじゃないかというほどに絶望している。
大人になったイコール初体験を終えた、と考えたのだろう。
実際に付き合っているわけじゃないからしたわけじゃないが、ゴールデンウィークでさらに仲良くなったのは間違いない。
だからバカップル度が増したようだ。
その言葉を聞いた何人かの男子も絶望し出した。
いちいち戯言など聞いていられないため、自分の席に鞄を置いてから姫乃の席に座る。
「タカくん?」
何で私の席に座っているんでしょうか? と思っていそうな姫乃は首を傾げた。
いつも教室で話す時は姫乃が自分の席に座って隆史がしゃがみこんでいるのが多いため、今の状況に疑問を抱いたのだろう。
「触れてないと、寂しいから」
ポンポン、と軽く自分の太ももを叩いた隆史の考えていることを察してくれたらしく、姫乃の頬は真っ赤に染まる。
手を繋いで話しているだけでも幸せだが、触れ合いが多い方がさらに幸せだ。
なので姫乃には膝の上に座ってほしい。
「失礼、します……」
髪の隙間から見える耳まで真っ赤にさせた姫乃は、隆史の膝の上に座った。
(な、何で向かい合ってなの?)
普通は背を向けて座るはずなのだが、何故か姫乃は向かい合って座ってきたのだ。
足を開くことになったものの、きちんとスカートを抑えていたので中は見えていない。
ただ、一つの椅子に向かい合って座っているということは、触れ合っている部分が多いということ。
そして普段と違って目線の高さが同じになった。
「人前で胸を使って慰めてあげるのは無理なので、こうして慰めてあげますね。二人きりになれるなら胸をでもいいんですけど、ホームルームまで時間がありませんので」
他の人に聞こえないくらいの声で姫乃は耳元で囁く。
もしかしたら麻里佳のことで辛くなったと思われたのかもしれない。
確かに麻里佳は相変わらず姉ぶって密着してきたりするものの、辛さはだいぶ軽減されてきた。
今は姫乃にベタ惚れなのだから。
「タカくん」
コツン、とおでこをくっつけてきた姫乃は近くで見ても本当に美しく、見惚れてしまう。
近くで見るのは恥ずかしいが、それすら忘れてしまいそうになるくらいに。
ただ、身体が熱くなるを感じるし、青い瞳に写っている自分を見ても頬は赤くなっているのが分かる。
「くうぅぅぅ……教室であんなにイチャイチャ出来るなんて流石はバカップル。俺も彼女がほしい」
「分かるわ。私も彼氏が欲しくなってきた」
イチャイチャしている隆史たちを見てクラスメイトが話している。
「そうなのか? 立候補していい?」
「あんたみたいなエロい視線を向けてくる人は無理だわ」
速攻で男子がフラれていた。
「それにしても二人を見てると同棲してるバカップルみたいね。一緒に住んでいたりして?」
同棲してるバカップルという言葉が聞こえたのか、姫乃は「あう……」と恥ずかしそうな声を出す。
「あの反応……本当に同棲しているのか?」
実際には付き合っていないからしていないが、いずれ同棲出来たらいいな、とは思う。
好きな人と一緒に暮らしたいと思うのは自然なことなのだから。
「タカくんは……私と同棲、したいと思いますか?」
感じる吐息も声も、何もかも甘く感じる。
「同棲はその……難しい」
確かに同棲出来たらいつでも慰め合うことが出来るために合理的かもしれないが、姫乃と一緒では理性と羞恥で身体が保たないだろう。
だから断るしか出来なかった。
もちろん本音を言うと同棲したいが。
「そう、ですか……」
悲しそうな声と表情だったのは、やはり一人では寂しくなったりするのだろう。
同棲すればいつでも寂しさを埋めることは出来るが、付き合ってもいないのにするわけにはいかない。
でも、もし付き合うことが出来たらしたい。
「気軽にタカくんの家に出入り出来る式部さんが、羨ましいです」
「ん?」
「い、いえ。その……またタカくんの家に行ってもいいですか?」
「そりゃあもちろん」
何やら誤魔化された気もするが、好きな人が来てくれるなら断る理由はないだろう。
それに徒歩十分ほどだし、来たいと思えばすぐに行くことが出来る。
「約束、ですよ」
「分かった」
おでこをくっつけて見つめ合いながら約束をした瞬間に予鈴が鳴った。
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