第8話 兄ちゃん②

 聞いて。聞いて。


 兄ちゃんは上級生に気に入られるためにぼくにボールぶつけました。


 サッカーのPKの練習だと連れ出され、駐車場で兄ちゃんを含めた七、八人の上級生に囲まれました。


 ぼくがキーパー、他のみんなが全員でゴールを狙います。


 膝に、肩に、顔面にボールが当たって痛くて、こけていて、もう途中で「ぼく、やめる」と告げて家に帰ろうとしました。


 けど、「まあまあ」とみんなに引きとめられました。みんなは楽しいんです。


「じゃあキーパー交代しよう」


 聞き入れられるわけがありませんでした。




 帰宅してから体中、痣だらけ。


 兄ちゃんは吐き捨てました。


「何でもっと楽しそうにできねえんだよ。何考えてんだお前」


「それはお前だろ」


 言い返すと、ガンつけられました。


「年上に向かって何だその口の利き方は」


 言い方も、顔つきも、父ちゃんそっくりでした。





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