第36話 日本帰国 1
「長州と外国が戦争を始めていたなんて……!」
新聞記事を見た五人は唖然とした。
そして、話し合いの末、俊輔と聞多だけが日本に戻ることになった。
二人はまずウィリアムソン教授に挨拶に行った。
「本当にお世話になりました」
イギリスの先進的な学者でありながら、縁もゆかりもない日本人である自分たちの世話をしてくれたウィリアムソン教授とそのご家族に、二人は深く感謝してお礼を言った。
そして、ジャーディン・マセソン商会のヒュー・マセソンにも挨拶に行った。
「どうか、勝たちのこと、お願いします」
残る三人のことも頼んで、俊輔と聞多は日本に行く風帆船に乗り込んだ。
「蒸気船に乗れたら良かったのだけど……」
「速さを考えたら本当にそっちのほうがいいのだけど、なにせ高いからなぁ」
急いで日本に帰って攘夷などと言っている人たちを止めたい。
でも、そのために値段の高い蒸気船を使ってしまったら、勝たちの滞在費を使ってしまう。
それを避けるため、結局、また風帆船となった。
「やっぱり何をするにも金だな」
「そうだね。お金が無ければ学問も出来ないし、船を作ったりもできない」
二人はしみじみとそれを感じながら、イギリスを立った。
そして、お金と同様に大事だと実感するものがあった。
『学問』である。
「今回は水夫になれとは言われないね」
「もう俺たちが英語が話せるようになっているからな。ちゃんと金を払った客なんだぞ! と言えるとわかってるから、そういう真似はしないんだろ」
外国語を話せるか話せないかでこうも待遇が変わるのかと思いながら、二人は船内でも勉強を続けた。
二人がイギリスにいたのは半年ほどだったが、それでもその外国経験と英語力が帰国後に物を言うことになる。
俊輔たちが帰国したのは、元治元年(1864年)6月10日。
「前の戦いでも長州は攻撃を受けてるのに! 今度こそ、本当に滅んでしまう!」
二人はイギリスの外交官エイベル・ガウワーと会い、帰国した理由を伝えて、協力を求めた。
「僕たちが長州に行って、外国との戦いをやめるように言います! ですから、イギリス公使に合わせて下さい」
「わかった。協力しよう」
ガウワーがイギリス公使館の通訳アーネスト・サトウと連絡を取り、俊輔と聞多はラザフォード・オールコック英国公使を会うことが出来た。
「お願いです。長州の無謀な行動を僕らが止めますから、四か国の攻撃を待ってくれませんか」
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