162試合目 師弟

 ということで次の日、俺は結城さんに動画について教えてもらうことにした。

「おはようございます」

 といってももう午後だが。

「お、おはよう……。じゃあ動画について早速教えるね」

 

 動画とはネットを見ているとその場でいきなり撮り、それを編集するイメージがみんなにはしみつきがちだが実は違う。

 事前に構成を考えることこそが重要なのである。

 いい例はよく縦型動画で撮影する前に画角を決めたり、ダンスの練習をして挑む人がいるのと同じだ。

「なるほど……。ではいきなりカメラは持つのは違うのですね」

「そう言うことだね……。まず重要なのはイメージ」

「イメージ??」

 それこそ頭でよく理解ができなかった徹は聞き直した。

「そうイメージ。これはこの画角でとった方が面白いなぁとか。今日はここに行くからここでとれるものはこれだろう。ならこう撮ろう。とか」

「なるほど。地形や物の特性を見て画角を変えるってことですね」

「うん」

 彼女の説明は小学生でもわかるほど簡単だ。教え方が上手いのかもしれない。

「でも経験値が高い人は動画を撮りながらでもその脳を作ることができる」

「すごい……」

 俺は初心者だからよくわからないが、おそらくは同時にたくさんのテストをうけるかの如くだろう。

「他には何が重要ですか」

「他には……いろいろあるけれど重要なのはこれ」

 ズームは極力使わない。これを多用すると視聴者は用だけでなくぶれも大きくなる。それが大問題。編集者的には無駄な動きをカメラマンにしてほしくない。

「では近づくしかないってことですか??」

「ああそう。でもこれは“ドリー・イン”という立派な技術」

 彼女はそういうとカメラを持つような動作をして前に進んでいった。

「注意点はあるのですか」

「ん、撮影をしてすぐ動くよりか一拍置くなどして静と動を組み合わせるなどをすることが重要。これがあるとないとで動画の差は歴然」

 俺は一生懸命メモを取っていた。それに気づいたのか、途中から俺のペンのスピードに合わせてくれる。それだけでもこの人は優しいということがよくわかる。

「いろいろ用語があるんですね……。覚えるのは大変そうです」

「そうだね……。でも最悪どういう機能かさえわかっていれば問題はないよ」

「わかりました」

「ちなみに余談だけど、徹君はアニメとかは見る??」

 唐突に少しにやっとして質問してくる。

「はい……?? たまになら」

「アニメの良しあしは意外と画角を見ていればOPの段階でわかったりすることも多いからよく見ておくといいよ。これ宿題」

「え!?? あ! はい」

(急だなおい)


 なんやかんや、こうして俺たちの師弟関係が始まった。

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君も今日から運動部!!! 鷹山 @hijiki0808

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