159試合目 月島
「あれ~~?? そんな驚いた顔して……。まさか?? 僕のファン??」
この鼻につくような話し方をする彼はそうだ。月島だ。
「いえ、違います」
俺はすぐさま否定する。
「というか先輩。なんでこのひとがこんなところにいるんですか??」
「ん~~?? それは僕の編集動画提供をしてもらってたからねぇ」
先輩はそんなこと興味ないといわんばかりに目をそらす。
「そゆこと~~! 俺が編集してもらえるWIN!! 繭香が編集できるWIN!! 略してWINWINさ!!」
手を狐のような形にしてそれをくっつける。正直ムカつくとかそういう次元じゃない。
「はあ……」
徹は適当に相槌を打った。そのタイミングの数秒後、扉がガチャリと開いて紫がやってきた。
「ごめんなさい~~。遅れました~~」
紫は少し額に汗をかいているように見えた。
「お~。大丈夫だぞ、まだ何も始めてないから」
「それならよかった」
笑顔が今日もとてもカワイイ、というか麗しい。そこにオスが目をつける
「うわあ!! マジ美人じゃん!! よかったら俺と食事でもいかない??」
紫に近付くゴミカスの肩を本気で握り、耳元でささやいた。
「調子のんなカス、殺すぞ?」
俺は人生で最も悪い言葉を今使った。
「ハイスミマセン」
それを聞いた月島は背後から感じる猛烈な殺意をひしひしと感じた。そのためか紫から一瞬で離れた。
「それよりこの人は誰なの?? 徹」
「これ?? ゴミカス」
「初対面でひどい!??」
思わず甲高い声が横から刺さる。
「じゃなかった。雑魚ゴミカス性悪チャラくそ男」
「この世の悪口全部詰め込もうとしてる!??」
「ずいぶんと怒ってるね……?? 徹」
そりゃそうだ。人生で一番触れてほしくない人に触れようとした害虫を怒らずにはいられない。
俺が冷静に話せるようにと背中をさすってなだめてくれる紫がいなかったらこいつに毒手をぶち込んで殺していただろう。紫に感謝しろ。
「ふう……ありがとう。この人はネット動画クリエイターの人だよ」
「へえ……! そうなんだ!!!」
「まあ……編集は先輩、カメラはスタッフ、つまんないトークをするこの男をクリエイターといっていいのかも分からないけどね」
「さっきから徹っちひどくない??」
「徹っち……?? てめえは黄瀬か、ああん?? だったら芸人のトーク力でもコピーしてこいやボゲェ!!!」
「何言ってんの徹っち!!?? 繭香も変だと思うよね??」
「変だと思う。月島が」
「ひどすぎる!??」
室内いっぱいに月島の声が響いた。
(で……なんでこの人がいるの??)
その疑問を口に出せない紫だった
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