158試合目 あれ……こいつは……

『どうも~~~!!! TUKKYTVの月島です!! さて今日もやってまいりましたが……』

  徹のスマホからハイテンションな男性の声が聞こえる。

「なるほどなぁ」

 スマホで見ていたのはネットに配信されている動画だった。

 その動画の企画では地元で1万円つかってみた。という今では少しインパクトに欠ける、いわばありがちな動画だった。

 しかしそのチャンネルの登録者数は50万人を超える。人気といってもいいレベルだろう。

 男性一人での撮影となっているのだが、おそらくスタッフがいるのだろうか?? 動画はその人が撮影をしており、よくある構成だった。

 しかしその動画を撮っている人の構図だったり、技術は人を引き寄せる力がある。もちろん引き寄せられているうちの一人が徹だった。

「兄さんはその人のチャンネルを結構見るんですか??」

 珍しくスマホにがっつく兄を見て少し柚希は驚いていた。

「いや、そういうわけではないけど……。どうも構図にひかれる部分や驚かされる部分も多くてな??」

 (ただ少しいうのであれば、すっごいこの男性がつまんないんだよなあ……)

 チャンネルのコンセプトであったり、企画は普通。よくあるがまあ面白いというもの。しかしこの男性の一つ一つの発言が非常につまらなかった。

 しかし画角のおかげか、はたまた編集のおかげか。とても面白いことを言っているように見えた。

 すごいな編集って。そう思う徹だった。

「兄さんも時々辛辣だよね……」

 妹には考えていることがばれていた。

「さすが俺の妹だな」

「……??」

 なぜここはわからないのだろうか。判定がばがば過ぎるだろ。


 しかしそんな俺にも少し違和感があった。

「なんだかこの辺にすごい見覚えがあるんだよなぁ」

 その動画では地元にということだったのでもしかしたらこの人と地元が近いんじゃないかと思った。


次の日の運動部活動。

「部長、この前やったウォーリーボールの動画完成したんですか??」

「まあね? 見てみる??」

 そういうと部長はPCのエンターキーを人差し指でかちっという音と共に押した。

 そこに映っていたのは鬱陶しくはなく、しかしチープではないちょうどいいほどに彩られたエフェクトがかかった躍動的な映像だった。

「すごいじゃないですか先輩!!」

「だろ~~??」

 二ッと笑う先輩は少年のような幼さがあった。

 そんな風に感想を言っていたその時だった。

 扉がガチャリと開いた。

「うっす~~!! 繭香!! 今日の動画も編集してくれええ!」

 少しチャラそうというか目つきが悪そうなこの男を俺は見たことがあった。

 TUKKYTVの月島だ。

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