157試合目 カメラマン

 西屋敷徹は外が街頭の光で照らされているところ以外何も見えないような時間に自室で寝転がっていた。といっても本当に寝るわけではなく、ただ寝転がっているだけなのだ。

「俺がカメラマンかあ」

 繭香に言われたことをふと思い出していた。

(いや……やったことないしな……。どうしたもんか)

 頭を悩ませること20分。よくわからない徹は専門書を買うことにした。

 そんな決意をしていると

「兄さんが本気で考え込むなんて珍しいね??」

 と少し嬉しそうな疑問そうな表情で柚希が訪ねる。


 柚希は現在高校三年生。少し髪を伸ばしていた時期もあったが、勉強の時邪魔ということでまた更に短く髪を切った。そんな彼女も現在受験真っ只中なのである。がそんなピリつきをわざとか否か、感じさせないでいる。素晴らしい妹だ。


「まあな。ちょっとサークル?? 的なことでな。あと勝手にドアを開けるな」

「いいじゃんか、兄さんのけち……。それより……、兄さんが真面目にやるなんて珍しいね?? 適当に普段ならいなすのに……もしかしてヤリサーにでも入ったの!??? 兄さん!!!??」

 どこでそんな知識ばかり覚えてくるのだろうかと少し頭を悩ませたあと、俺ははあっと大きくため息をついた。

「そんなわけないだろ?? そんなことしてみろ。紫が殺しに来るだろうが」

「確かに!! でも兄さんは誤算があるね??」

「なんだよ??」

「紫さん以外にも身近な……そう例えば血縁関係のある人とかが襲いに来るかもね」

 すごいな?? 右手に包丁を持って笑顔で語る妹を見ていると、妙に信憑性があるもんだ。絶対にしないでおこう!!

「ははは……そうだな」

 俺はとりあえずその発言をいなしておいた。と言いつつもばれているだろうが……

「でも兄さんのサークルって何なの??」

「運動部」

「え??」

「運動部」

「??? サッカーとか??」

「いやウォーリーボールとか」

「??????」

 一生懸命理解をしようとしてくれている妹だが、どんだけ考えても理解しそうな雰囲気はなかった。

「まあ、簡単に言えばマイナースポーツを活性化させようっていうサークルだ」

「社会貢献ならぬ競技貢献みたいな感じ??」

「まあそういうことだな」

 なんとなく理解してもらえてよかった。今の一瞬だけおそらくだが、妹は勉強より頭を使ったと思う。

「それでカメラを兄さんが使うんだ??」

「まあ、そういうことだな」

「なんだが大変そうなことやってるね……」

「そうだな……」

「でもそれなら今話題の動画配信者の動画とか見てみれば??」

「それだ」

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