156試合目 部活動開始
「はあ~面白かった」
10分間休息なしで動き続けたのにもかかわらず、春馬はぴんぴんとした姿を見せていた。
汗一つないその姿を見て繭香は興奮していた。
「すごい!! すごいよ春馬君!! はあっはあ!!」
しかしそれを本能で危険視したのかさくらが止めに入るのだった。
「だけど先輩。一つ質問いいですか」
「なんだい?? 春馬君」
「試合中ずっときになっていたんですが、部屋にカメラがいくつか配置されていましたよね?? あれなんですか」
試合中、壁を見る機会も多かったせいだろう。壁についていた不自然なカメラが時々視界の端に映るのがわかった。
「ふっふ~~ん! あれはね。一応動画をとっておいて後で編集するための素材にしようって考えていたんだ~~」
なるほど、そういうことか。
「でも動画を上げるって、それだけではすぐは伸びませんよね??」
「お~、勘がいいね。その通りさ」
「じゃあどうするんですか??」
「君は登竜門というものを知っているかい??」
繭香は少し真剣な面立ちで言う。
「登竜門?? それはもちろん知ってはいますが……」
「最近では若者の映像作品を応援しようと様々な企画が立てられている。映像作品を 応募する場が多くあるってことだ。もちろん優勝すればその作品は紹介される。この意味が分かるかな??」
「その場でよい成績を残せれば……それが拡散力になる……!!」
「ざああああっつ!! ライト!!! その通り!! つまり僕が動画にこだわるのは他とは圧倒的に違う拡散力!! そこにあるのさ!!」
満面の笑みでピースをする繭香は幼さを残しつつ、にじみ出る秀才さを醸し出していた。
「ということはその大会ように今回とった動画を使うんですか」
「それは違うね。言っただろう?? 僕はカメラを使うのが苦手だと」
「でも充分にとれていると俺は思いますが」
何が不満なのか。それがわからなかった徹は少し眉を寄せ、頭に疑問符を置いた。
「誰でも定点カメラなんて簡単にできるさ。計算すればね。ただ定点……あくまで動きはないんだよ。画角も同じ……そんなのを誰が楽しむと思うか?? 聞き方を変えよう。防犯カメラを永遠に見て何が楽しいかな??」
(なるほど……そういうことか……。俺はカメラには詳しくないけれど、カメラのズームとか画角を変えるというのは重要、それくらいはわかってる。つまり動きをしているものに対して静のカメラでは迫力が欠けるってことなのか)
「お! 理解した顔じゃないか。もちろんズームや画角も大事だけど、他にも様々な技術があるからね。それをするのが君なんだ。西屋敷徹くん」
「……!!」
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