122試合目 春馬の葛藤
俺は……どうしたらいいんだろう。
春馬の心は温かい水の中でさまよい続けるかの如くふわふわとしていた。
「はあ……」
春馬は久しぶりに西屋敷とは一緒に帰らず、一人で家に帰っていた。
久しぶりだな……一人……。どうしてさくらいさんはあんなに俺のことを好いてくれるのだろう。
実際、春馬が告白されるのは初めてではなかった。
しかしそれは一瞬だった……
それは全体で言えばそこまで遠くなく、春馬にとっては過去の話。
「春馬君のことが好きです!! 付き合ってください!!!!」
夕焼けが照らすだれもいない教室で一人の女の子が春馬に告白をした。
「お、俺のことが好きなの???」
春馬はこれが初めての告白だった。それゆえに、かなり動揺した。
「そうです!! ずっと前から部活で頑張ってる春馬君を見て好きになって……」
「そうなんだ……。でもごめん……」
春馬は彼女からの告白は断った。理由は部活に専念したいというありきたりな思いからだった。
しかし彼女にはそんなのはわからなかった。なぜならわかろうとしなかったからだ。
春馬はある日、部活が早めに終わり帰ろうとした時だった。
校舎裏でこの前告白してきた彼女と他の女生徒が話しているのを見かけた。
もちろん聞き耳を立てたわけではないがたまたまその会話は聞こえてしまった。
「あ~~そういえばさ、春馬との件はどうだったの??」
「うへ~~。それ聞いちゃう?? ダメだったわ~~~」
春馬も少しびくっとはしたがこのくらいはある話か。と特に何も感じなかった。しかしそのつぎの言葉は春馬の心にトラウマという名の抜けない槍を突き刺した。
「まあいいけどね~~。ただ惜しかったなあ。付き合えればかなりのステータスで他の女どもに自慢できる道具にできたのに~~」
春馬はその言葉に笑った。バカみたいに。
「そうじゃん……!! そうじゃんか!!! 俺と付き合うなんてそんなのただの道具だとしか思われないに決まってるじゃん!! あははは!!! あははは……あは……は……。っぐ!!!!! うあああああああああああああああぁぁぁぁ!!!!!!」
初めての衝撃だった。逆に言えば今まで運がよかったのだ。本当に愛してくれる西屋敷家のみんなに出会ってやさしさに知らないうちにおぼれていた。
「おれ……馬鹿だなあ……」
そこから俺はどんどんバカを演じた。自分の心を隠すかのように。
そうしたら春馬は本当の馬鹿になっていた。
「さくらぎさんも本当はどう思ってるのかも分からない……もしかしたら俺のことなんて……」
「この……!!!! ばかやろおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」
帰り道、後ろから聞こえてきたその声は、
「さくらださん……!?」
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