121試合目 気づいてよ
修学旅行が終わってしまった。
この喪失感は学生にとって、最も大きな……たとえるならば長年続いていた作品が終わるくらいの喪失感だ。
クラスはもはや余韻に浸る修学旅行中毒になっていた。
「修学旅行修学旅行修学旅行修学旅行修学旅行修学……」
連呼する者もいれば……
「わあ!!! 海きれ~~~い」
幻覚を見る者……
「修学旅行いつ行くんだ???」
記憶がすっ飛んだ奴までいる位だ。
そんななか、さくらも少し様子がおかしい。
「どうしたんだ、さくら。そんな顔をして」
「何でもないわ……」
何だろうか?? いつもなら春馬の方を気持ち悪いぐらいに見つめる癖に今日はずっと下を向いている。
さくらだけならいい。なぜか春馬までもが静かなのが奇妙だ。こいつが静かなところを見るのは初めてだ。
「春馬、なんかあったのか???」
「西屋敷……。あったんだけど、多分西屋敷には言っちゃいけない気がするんだ……」
何だこいつ。気を遣われてる??? まさか。俺に気を遣うなんて春馬が人格形成からやり直さない限りありえない。
「と~~お~~~る~~~」
後ろから抱き着く鈴はいつも通りだ。
「暑い。やめろ」
「もうすぐ冬よ?? これぐらいがちょうどいいわ」
「確かにそうだが……。抱き着くな」
「照れちゃって~~~」
いつも通り。いつも通りなのだが、すごいさくらがこっちを見てくる。
な、な、なんだ……。なんか俺やったかな??
もちろん西屋敷が何かをやったわけではない。
さくらは先日のことを意識しすぎて普段通りに話せないほどに緊張しているのだ。
(どどどどうしたものかしら!! 先日のあの春馬君の反応……!! 絶対にちゃんとききき聞こえていたのだわ!! でもなんで何も言ってこないのかしら……!!!
もしかして……。それにしても鈴さんはあんなにアタックできてうらやましいわ……)
とこんなことを考えているのだが到底周りが理解できるわけもなく……。
西屋敷は勘違いをしていた。
絶対なんかあっただろおい……!!? もしかして俺がやったのか。何が! 何が原因なんだぁぁぁぁぁぁ!!!!!
一人で頭を抱える西屋敷だった。
そのあと授業が終わり昼休みとなった。
ここで春馬に何があったのか聞かねばならんな……
「おい、春馬……??」
「どうしたの……」
少しばかり元気がないように見えた春馬にやはり違和感をもつ。
やはり変だ。一応主人公の癖して病みすぎだろ。
「やっぱお前変だぞ。何があったかは知らないがいってみろよ?? 力になれるかもしれねえぞ???」
「でも……。ありがとう。大丈夫!! これは自分で解決しなきゃいけないしね!!! ほら墓穴に入らずんば赤子を得ずっていうしね!!!」
いや虎穴に入らずんば虎子を得ずな??? 怖すぎだろ。
急に春馬のエンジンがはいったのはカラ元気か本当に元気だからかはわからないがとりあえず思っていたほどではないから安心だ。
ここは春馬に任せてみるか。
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