120試合目 回れ回れ回れ終わりの挨拶まで遅れるぞい!!!
俺たちは三人でいろいろ見て回ることにした。
紫に服を見てもらったり、鈴にアクセサリーを見てもらったり……。
あれ??? 俺ばっかじゃないか??
「なんか二人も見たいのがあったら見てもいいんだぞ??」
「だから見てるでしょ?? 徹くんのこと」
何という破壊力なんだ、紫。
「わ、わたしだって見てるんだから!」
変な対抗心を抱くな。
結局あいつらは俺の方しか見てこない。なんて奴らだ……。
そのあとはゆっくりとしたのち集合をする予定の場所まで戻った。
するとそこにはさくらがいた。
「お~さくら。春馬はどうしたんだ??」
俺が近寄るとさくらは顔を背けた。
「なんだ?? 顔を背けて。なんかあったのか??」
俺は不自然だと感じたのでさくらの顔を覗き込むとさくらは泣いていた。
「どどど、どうしたんだ!?? 何があったんだ!!」
「っく……ふぐう……。春馬君が……!! 春馬君が……!!」
「春馬になんかあったのか!??」
「迷子になっちゃった~~~!!!」
「ああ……」
何だそんなことか。てっきり喧嘩でもしたのかと思ったぞ。
「何よその反応……!! 春馬君が迷子なのよ!? 一緒に探しなさいよ!!!」
「え、あ~~。別にいいだろ」
「なんで!?? そんなに冷たいの???」
「いやあいつを人間だと思っちゃいけない」
「??」
「あいつは嗅覚と感覚が人間のそれを超えているんだ。だから……」
「おーい!!! み~~んな~~~~!!!」
手を振りながら大量の荷物を持って走ってくる春馬の姿がそこにはあった。
「ほらな??」
「春馬君!!!」
なんでこいつは高校生の迷子に対して、まるで戦争から帰ってきた最愛の人みたいな反応ができるの??
まあとりあえず最後は締まらなかったが……、修学旅行……終了だ!!
帰るまでが修学旅行だ。なんていう人がいるけれど、バスで帰るんだから気を張るのって俺たちじゃなくて運転手のおじさんなのでは……?? と少し思う。
そんなことを考えていると自然と俺は眠りに落ちた。
周りのみんなが寝ている中、起きていたのはさくらと春馬の二人だった。
「あれ?? もう西屋敷たち寝ちゃったのかな???」
「そうね……」
そして少しの沈黙が続いたのちさくらは何かがあふれ出しそうな……そんなものが流れ出ないようにそっと口を開いた。
「好きよ。春馬君」
「……」
(あれ……?? 何も言わない……?? もしかして寝ているのかしら……??)
さくらは錆びたかのように固まった首を動かして春馬の顔を見ると春馬のその頬は夕日に照らされていた。
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