47試合目 一日限りのデートからの過去。
イルカショーを鑑賞した俺たちはだんだんと終盤に近付くのを感じながら歩き、魚の群れという自然の芸術を楽しんだ。
「はあ、あっという間でしたね。」
柚希は本当に楽しかったという表情で俺の方に八重歯を見せ笑った。
「そうだな、今日は連れて来てくれてありがとう。楽しかったよ。」
「それならよかったです。」
ああ、本当に楽しかった。騒がしい毎日もそりゃあ楽しいけど、こんな静かな眺めるだけってのも悪くないな…これに気づけたのも柚希のおかげってわけだ。
「ありがとな。」
そう俺は言いながら柚希の頭を優しくなでた。
「えへへ…」
カワイイ妹だよ…まったく。
水族館の外に出るとすでに夕日が出ていた。
「もう暗くなるから帰ろうか。」
「はい、兄さん。」
そういうと柚希は徹に抱き着いた。
「ブラコンはもうやめような??」
「また今度です!」
「はいはい、わかったよ。」
幸せな人なひと時を今感じた…
その日の夜のことだった。
いつもより遅い夕飯にはなったが二人で今日のことを話し、楽しんでいる時だった。
ガチャっとドアが開く音とともに、
「ただいま~」
という声が聞こえた。
「おかえり父さん。」
このスーツ姿の男は俺たちの父 西屋敷俊介だ。
「ただいま、徹、ゆず…」
父が言い終わる前に柚希はご馳走様と言い自分の部屋に戻っていった。
「だよな…」
そしてこの父のさみしそうな顔がある。この顔が俺は苦手だ。
「そう…だね。別にあの事は父さんが悪かったわけじゃない、それは柚希もわかっているはずなんだけどね。」
「だといいな、今日のご飯は???」
暗い気持ちでいるのは父も嫌いなのだろう、話題を変えようとした。
「今日はカレーだ、時間がなかったからね。」
「どこか行ってたのか???」
「そうだよ。実は…」
と今日の話を父にもした。
「そうか…柚希、ちゃんと笑えるんだな。ならよかった。」
わかると思うがこの人はすごくいい人だ。それを柚希にも思い出してほしい。
「父さん、俺からあの時のこと言っておこうか??」
「いや、いいよ。あの時のことはすでに俺が柚希に行った。ただあいつは信じてくれなった。多分お前が言ってもそれは変わらないだろう…お前の評価が下がるくらいなら嫌われるのは俺だけでいい。」
そういいながらも本当はそんなのいやだと言わんばかりにつらそうな表情をしていた。
柚希は父のことが嫌いである。それは過去のことが影響している。しかしそれはあいつの思い違いなんだ。
そう、あれは十年以上前のことだった…
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