第58話

「よお、和泉。

 六郎さんのプロポーズは何だったんだよ」


ええ。

そんな。

だって。

ええええええ。

恥ずかしい。


「何だよ、ずりいぞ。

 聞かせろよ」


うん。

ちょうど六郎さんは席を離れてる。

お料理の追加。


輝子ちゃんを送って行ったあの日。

家の玄関で六郎さんは和泉さんの手を握りしめた。 


「私とあなたは年が離れすぎている。

 親子みたいなものだとずっと自分に言い聞かせていました。

 でも本当は……

 私は、和泉さんあなたといたい。

 ずっと一緒に暮らしたい」

 

「私はバカですね。

 こんな事を言うのに何年も貴方を待たせてしまった。

 だけど、和泉さんがそんなバカな自分で良いのなら。

 結婚してください、和泉さん」


和泉さんの返事はもちろん。


「六郎さん以外の男の人なんて考えられません」



照れつつ、キャーキャー言ってる和泉さん。

おおうっと盛り上がる女性陣。


輝子ちゃんも赤面。


「六郎さんのあの良い声で言われたら、

 それだけで女子ならみんな落ちますね」



納得いってないのは弟達だ。


「何だよ、和泉とあの男のジャマしに来たのによ」

「既に籍入れてるなんてよ」


和泉さんの弟達が言う。

ジャマしに来たのか。


「兄さん達、そんなコト考えてたんですか」


秀瑚ちゃんも呆れ気味。


「もう社会人なんですから、シスコンは卒業してください」


祐介は社会人二年生。

晴介は今年就職したばかり。

ピッカピカの社会人一年生。


「誰がシスコンだよ」

「俺達は彼女いるっつーの」


ええっ、何時の間に。

驚きの和泉さん。


「その彼女を放っておいて。

 姉さんに逢いに来てるからシスコンだと言うんです」


秀瑚ちゃんは一刀のもとに切り捨てる。



「おかしーじゃねーかよ」

「何年も和泉と二人で暮らしてたんだろ」


「とっくにオトコとオンナだろ」

「あのオヤジ、最初は逃げるつもりだったんじゃないの」


「あれ……」

「ずっと一緒に暮らしてて、いきなり結婚……」


「和泉、まさか?!」

「和泉、オマエ?!」


「ええええええっ?!

 柿崎さんマサカ……」


二人の話を聞いていて蒼褪める金津くん。


「なに、何の話?」


「なにって、つまり……」

「ようするに……」


小声で顔を赤らめて話す弟二人。


「……デキチャッタ婚てきな」

「……いわゆる家族計画に失敗しましたみたいな」



和泉さんは拳を握りしめる。


「このバカ介ーーーーっ!!!

 人前でなんてコト言い出すの。

 そんなコトあるワケないでしょーーーーー!!!」

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