第59話

「いや、ホントに無いよ。

 誤解しないでね、みんな」


和泉さんは女性陣に手を振る。

アタフタ。


祐介、晴介は頭を抱えてる。

久々に姉のゲンコツが炸裂したのだ。


あいたたたた。

久々だが、やっぱり効くなー。

頭をさすってはいるものの、何だか嬉しそうな二人。


Mじゃねーからな。

カンチガイすんなよ。



六郎さんが戻って来る。

お料理と果物。


「和泉さん、蜜柑有りますよ」


みかん。

コタツとみかん。

The日本人の冬ってカンジ。

わーい。

日本人の和泉さんなのだ。


祐介、晴介はそんな顔をみてしまった。


だってなー。

俺たち子供の頃、和泉にはすげー世話になったのだ。

アイツを幸せにしないと、ダメじゃん。

だけど。

姉は現在幸せそうな笑顔を浮かべてる。


「和泉姉さんを幸せにするのは二人の役目じゃ無いんです。

 ちゃんと祝福してあげなさい」


秀瑚ちゃんが言う。


ちぇっ。

そんなの。

分かってるっつーの。


「おーい、六郎さんだっけ」

「和泉と結婚したって事はオレらのアニキってこと?」


ちょいちょい。

部屋の隅にオトコだけで集合。


「何ですか」


「うーん、マイアニキよ」

「へへへ、おにーさまよ」


「あんなキレイ話で俺達がナットクするかよ」

「もっとホンネを聞かせろよ」


「……なんの話です」


「そーです。

 僕も気になってます。

 六郎さんがホントに和泉さんを好きなら、

 何故こんなに待たせたんですかっ?」


金津新平くんも密かに合流。

僕はカンタンにはナットクしませんよ。

顔に決意が現れてるのだ。


ふー。

溜め息を一つ。

六郎さんがヤローどもを見つめる。


あんまり楽しい話じゃありませんよ。

自分には母がいました。

父が数年前に亡くなって寂しそうだった母親。

そんな母親を自分は見ていた。

庭を見るだけで一日何もせずに過ごす母。

あんなにお喋りだったのに、なにも話さなくなった母。

そんな母を救ってくれたのが和泉さんです。


「……その話は少しだけ聞いた」

「……ヒデコちゃんから又聞きだけどな」


「僕は初めて聞きました。

 さすが柿崎さんですっ」

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