第31話

和泉さんは餅子ちゃん綱子ちゃんに話し出す。


「何とっ、六郎さんに許婚が現れたんですか」

「しかもセーラー服の高校生」


「それは予想もしない展開ですね」

「黒髪がキレイな美少女か、そりゃまたすげーライバルだな」


いいなづけって。

「そんな大げさなもんじゃ・・・

 小さい子供の頃の話って言ってたし」


和泉さんは言うけど。

綱子ちゃんも餅子ちゃんも聞いてない。


「親戚だろ、結婚できんのか?」

「結婚が許されないのは3親等以上。

 いとこは4親等ですね。

 従姪が何親等かは知りませんけど。

 いとこが結婚できるんです。

 トーゼン出来るでしょ」


「だから子供の頃の話だって」


「向こうは今でもその気って言ったんだろ」

「しかも泊まりに来てる。

 大学生になったら一緒に住む、って事は親も認めた婚約者じゃないですか」


「今頃家では二人きりか」

「女子高生とオジサマが二人っきり」


もう。

そろそろ怒鳴っちゃおうかな。

そう思った和泉さん。

だけど餅子ちゃんの言葉でタイミングが外される。


「和泉さん、お弁当どうしたんですか?」


いつも六郎さんのお弁当を食べてる和泉さん。

今日はコンビニのサンドイッチなのだ。


「女子高生に夢中で六郎さん、弁当作り忘れたか」

「そんな訳無いでしょ。

 朝、あたしが忘れたの」


いつも二人きりの朝食の場。

今日は輝子ちゃんが一緒。

何か六郎さんと輝子ちゃんが話してる。

輝子ちゃんが和泉さんを無視する様に六郎さんに話しかけるのだ。

六郎さんもそれに付き合ってる。


和泉さんには分からない、親戚の話。

輝子ちゃんの昔の話。


そんな状況にイライラした和泉さん

お弁当持ってくるのを忘れてしまったのだ。

それもムスっとしてる原因でもある。


その時、女子の休憩部屋の扉が開く。

金津新平くんが入って来た。

女子だけの場所に男子が入ってくるのは少し勇気が要るのだけど。


「あの、柿崎さん。

 お客様です」

「お客、あたしに?」


昼休憩時間なんだけどな。


振り向いた和泉さんの目の前に立っていたのはセーラー服の少女。

上杉輝子ちゃんだった。


「輝子ちゃん、どうしたの?」

「柿崎さんがお弁当を忘れたので、

 届けるよう六郎さんに言われてきました」


「わざわざ? ゴメンね」

「いえ、明日模試を受ける場所は近くなので。

 場所の確認ついでです」


聞いてみると駅の逆側にある予備校。

和泉さんも知ってる場所だ。

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