第7話
「糸部響子さんは精神障害を患っていると考えられます」
「そうですか...」
江藤さんに事情を説明して、精神科に連れてきてもらった。
あれから響子は、幻覚を見だした。
居ないはずの父親に話しかけたり、母親に話しかけたりだ。
「入院を勧めます。精神が不安定な状態で放っていては危険です」
やはりそうなるか。まぁ、こんな状態で何をするかわからないからな。
保護者代理は江藤さんになったが、俺の意見を尊重したいらしい。
俺は江藤さんと目を合わせ頷く。
「お願いします」
「では手続きをお願いします」
江藤さんに手続きを頼んで、俺は響子を見ることにした。
「響子」
「翔ちゃん、おかえり」
響子は外のベンチに座らせておいた。
「響子、お前足に気づかないうちに傷が出来てるって言っただろう?」
響子は糸部や父親や母親のことについて覚えていない?っぽい。
「うん」
「お前が無自覚でしている怪我が重症化した時のことを考えて、病院で検査とかしたいから少しの間だけ入院してもらいたいんだが...いいか?」
「いいけど...パパとかママに言わなくていいの?」
「お前の父親と母親には連絡をしておいたから心配しなくても大丈夫だぞ」
嘘をついた。少し胸が痛かった。
「竹中くん、手続きが終わったよ」
「あ、江藤さん。ありがとうございます」
「大丈夫。で、今日から入院が可能らしいから、日用品とかを買いに行こう。」
今もまだ警察の調査が続いているため、私物の持ち出しは許可されないだろう。
「どこ買いに行く?響子。印有良品?ニポリ?」
「ん~!印有!あそこシンプルでおしゃれなんだよねぇ~」
「竹中くん、ちょっといいかな」
「はい」
響子との会話を切り上げて、人の居ないところへと足を運んだ。
「とりあえず入院は決まったけど、これからどうする?」
精神科に受診する前に、江藤さんには糸部が犯した殺人のこと、精神が不安定なことなどをすべて話していた。江藤さんは今回の件は複雑なため、警察に即通報するのではなく、結果を見て動いてくれることになった。
「まず質問なんですが、響子は罪に問われるのでしょうか?もう多重人格ではないのなら、確かめ様がないので有罪判決になるのでは?」
「今の響子ちゃんは精神障害を抱えているし、犯行現場の状態や母親の状態なども考えた結果、無罪になる可能性は大いに残されていると思うよ。」
とりあえず無罪になる可能性があってよかった。担当が江藤さんでなければ終わってた。
「それはよかったです。じゃあ今後は響子の無罪判決と精神状態の回復を目標にします。江藤さんは...」
「もちろん付き合うよ。こんなかわいそうな子放っておいたら児童相談所失格じゃないか。第一、君一人じゃ何もできないだろう?児童相談所を通して検察に話を通してみるよ」
「ありがとうございます...」
「さぁ、響子ちゃんのところへ戻ろう」
~江藤視点~
と、言ったはいいものの...正直きついかもしれない。
日本の有罪率は99.9%だ。でも罪を軽くする程度だったら行ける。
少しでも可能性があるなら竹中くんのモチベーションを下げずにその少しの可能性にかけるべきだ。
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