第6話
「そんなこと言うなよぉ~殺しあった仲じゃないか」
糸部はにやけながら俺にそう言う。襲ってくる様子はなさそうだ。
「うるさい。そんなことよりもなんで響子の父さんを殺した?お前は児童相談所に相談して法律で罰してもらうってどうせ聞いていたんだろう?!なのになんで!」
「辛かったんだよ。」
「辛かった?散々人を殺しておいて何を言うんだ⁉」
こいつは何人も人を殺した。そして、響子の父さんも。
「君は考えたかい?自分に対して暴力を振い続けて家族を崩壊させた父親を直接手を下せずに法律を使うもどかしさを。しかも刑務所に入った父親は何も反省をしていなく、憎しみ続ける可能性もあるんだ。つまり父親が生きていることでストレスが軽減したとしても完全には消えない。そうなるとどうなると思う?」
糸部は響子のストレスが原因で生まれた人格だ。糸部から響子を切り離すためには原因をつぶさなくてはいけない...
「つまりストレスが消えない限りお前は消えないのか」
「そうだよ。やっと正解にたどり着けたね」
いやまて、なんでこいつは自分から消えようとしているんだ?
「なんでお前は自分から消えようとする?」
「糸部響子が殺人を犯すほどのストレスを感じているのに、君は最初気づかなかっただろう?それは私が糸部響子のストレスをほぼ全部負担しているからなんだよ。」
そうだったのか。響子が普段とあまり変わらなかったのにはこんな理由が...
「竹中翔、君に逆に質問だ。24時間狂いそうなほどのストレスを感じていて、消えれば楽になれるのに、君は消えないとでも言うのかい?」
声が低いはずの糸部が、もうワントーン低く、鋭い目でこちらを睨みながら言う。
先ほどまでのにやけていた糸部とはまるで別人みたいだ。
「それは...」
「そういうことだよ。私も作られたくて作られたわけじゃないんだ。それにね、目が覚めると、憎い、殺したい。っていう衝動に駆られるんだ」
「故意で殺していたわけではないのか...」
大体の内容は理解した。あれ?でも...
「じゃあ、お前はなんで消えてないんだ?」
父親がストレッサーになっていてそのストレッサーが居なくなったのだから、糸部は消えるはずだ。
「それは糸部響子が父親の死をさっき知ったばっかりだからだよ。詳しいことはわからないけど多分、糸部響子が目を覚めたら私は居なくなると思う」
俺は考え込む。
「お前が故意で人を殺したわけではなく、お前が100%悪いってわけではないことは分かったうえで、相談してもいいか?」
「理解してくれたみたいで何よりだよ。お礼として相談に乗ってあげる」
「響子の今後についてだ。多重人格とはいえ、人を響子の体で殺したのは事実だ。この場合、罪に問われるのは響子だよな?」
「いや、私も少し気になって前に調べたんだ。多重人格などの精神疾患を患っている人は無罪判決になるらしいんだ」
それはよかった。
「でも、もう一つの人格であるお前が消えてしまったら精神疾患がなくなるから有罪になるんじゃないのか?」
「今回は児童相談所に相談していたのが吉に出たね。多分君たちを担当してくれた人が味方に付いてくれるんじゃな...」
糸部が倒れる。
「糸部?どうした?」
「さっき言っただろ?私は消えて楽になるんだ...とりあえず児童相談所の担当者に助けを求めるんだ。それじゃあ、私は...消え...る...」
弱弱しい声で糸部はそう言って、目を閉じた。
人格が消えた。それは死と同義なのだ。
「悪い奴では、なかったな...」
俺は、床に倒れている響子を俺のベットの上に運んだ。
とりあえず、糸部の助言どうりに動こう。
まあ、動き出すのは響子が目を覚ましてからだ。
自分でも少し調べておこう。
自室にあるPCの電源を起動して、イスに腰掛ける。
「翔ちゃん?」
後ろから響子の声がした。
「うわっ!びっくりした...なんだ、お前起きていたのか」
ん?何か違う。見た目や声こそ何も変わらないが、何かが違う。これは俺の勘だ。
「驚かせちゃったね...ごめんごめん...ってうわ!もう20時じゃん!帰らなきゃパパとママに怒られちゃう!」
どういうことだ?
「パパとママ?」
「そう!今日のご飯はハンバーグなんだよ!」
何を言っている?響子の母は精神病院に居て、父はさっき死んだことが発覚したばかりだろう。寝ぼけているのか?
「でも、お前の父さんはもう...」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
響子は頭を抱えながら叫んだ。
コメント;寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で(三日間の幸福)を
最近読みました。とても感動して心が突き動かされました。
なので次の作品は感動系にしたいです。
BFVがアマゾンプライムで無料でもらえたのでやってみたら
難しすぎて諦めました。
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