第2話

 「翔ちゃん、今日どこで寝る?」


考えていなかった。完全に盲点だ。これは俺の部屋に2人で寝るか?

でも俺の部屋だと狭くて布団をもう一枚敷くスペースがない。リビングで2枚敷くのが得策か?


「俺の部屋だと布団を敷くスペースがないからリビングで2枚敷いて寝よう。」

「ふ、二人で?!?!?!?!」

「バカ、このお泊り会の目的忘れたのか?お前の夢遊病の調査が目的だぞ?」

「そうだった...」


俺の部屋の布団1枚で2人で寝る展開も考えたが、非現実的だし、色々と持たないから考えるのをやめた。


「ほら、敷くの手伝えよ。テーブルを少しずらさないといけない。」

「了解であります隊長!」


そうして響子とテーブルをずらし、布団を敷き、歯を磨いて寝る準備を済ませた。


「翔ちゃんはどっち側で寝る?」


響子は寝相がとても悪い。そう、とてもだ。小学校のときにお泊り会をしたときは、頭を蹴られることが多々あった。高校に入り、寝相が改善されたことを願うが、確率は低いだろう。

よって、俺の中で導き出された答えは、枕元にずらしたテーブルがある左側に俺が寝て、キッチン側に響子が寝る。だな


「俺は左側に寝るから響子は右側で寝てくれ。」

「了解であります隊長!」

「お前いつまでそのキャラ続けんだ...」



そして電気を消し、寝る姿勢に入った。


「今日は楽しかったね」

「ああ、久しぶりにあんなにゲームで笑ったよ」


冷静を装っているが実際はとても緊張している。なぜかって?!?!黒髪で巨乳な可愛い幼馴染と近距離で寝ているんだぞ?緊張しないのかワレェ!?!?!えぇ!?


「っていうかお前ゲーム下手すぎだろ。なんでスター状態なのに死ぬんだよ」


俺は笑いながらそういう。


「........」


響子からの返答がない。

ふと響子の方をみると響子は寝息を立てて寝ていた。寝るの早いなこいつ。自分から話振っといて。まぁ今日はたくさん遊んで疲れたんだろう。そっとしておこう。

さて、俺の今日の役割である夢遊病の調査のために今日は昼過ぎまで寝た。おかげで目はパッチリだ。さあ、来い夢遊病!!


その瞬間、響子は立ち上がった。


「どうした響子?」


返事はない。

本当に夢遊病なのか?どこに行くんだ?こいつの場合、ただ寝ぼけているだけでトイレをしたいだけかもしれないし、寝てるふりをして見ておこう。


次の瞬間響子はキッチンのほうに走り出し、俺が洗った包丁を手にした。


「え?」


思わず口にしてしまった。


「起きてたのか」


響子はいつもよりワントーン低い声でにやけながら言う。


「お前、なにしてんだ? なんで包丁なんか持って...」


次の瞬間、響子は包丁を俺に向けて突き付けてくる。

目を見て分かった。こいつは響子じゃない。

そう悟った俺は必死に逃げた。どかしたテーブルを軸にして周るように、逃げた。響子じゃない何かから。

すると響子は驚異の身体能力をみせ、軸にしていたテーブルの上に飛び乗り、俺に詰め寄ってくる。


「お前は誰なんだ?」


俺が声を震わせながら質問する。


「こいつの名前は糸部響子だよな?」


響子じゃない何かが低い声で言う。


「そうだが?それが何なんだよ!」

「じゃあ糸田と名乗ろう。」


糸田?苗字ってことは別人じゃないってことか?だが顔つきが完全に違う。いつもの響子じゃない。

そう考えるうちに糸田は包丁を突き立て近づいてくる。

完全にやられた。テーブルをずらしているから後ろは壁だ。逃げ道はない。

これは何なんだ?

人って死に直面すると動けなくなるっていうのは本当なんだな。

死にたくない。

色々な感情が混ざり合い、自分でもよくわからなくなっていた。

俺は死を覚悟し、目をつぶった。


「ガタン!!」


その瞬間、何が起きたのかわからなかった。

目を開けると糸部はテーブルの上で倒れていた。

目で見ても理解するのに時間がかかった。

どうやら夕食後に俺がテーブルを消毒する際に使ったタオルが置きっぱなしになっており、それで滑って転んだらしい。

包丁は地面に投げ出されていたのでひとまず安心した。

汗がひどい。精神性発汗というのはこのことを言うのだろう。

まて、糸部どうなった。響子は無事なのか?

気絶している様子の糸部響子の手首を持ち、脈の確認をする。


「よかった...」


思わず声が漏れた。だが安心していいことなのかわからない。響子の安全が確保されたということは糸部の安全も確保されたということに等しいのだから。

とりあえず包丁を片付けて、響子を布団に戻した。

そのまま俺は緊張が解けたせいか一気に眠くなり寝てしまった。



その日の朝、俺は飛び起きて自分の体と響子を見た。

俺には傷1つなく、響子もまだすやすやと寝息を立てて寝ている。

夜中の出来事は夢なのではないか、と思った。


「最悪な夢だったな...」


時計を見ると8時になっていた。

そろそろ響子を起こすか。


「響子、起きろ~朝だぞ~」

「まだ起きたくな...って痛!!」


響子は突然立ち上がりそういう。


「どうした?」


俺は響子を見上げてそう言った。


「頭が痛いの」

そういって響子はおでこを触る。

「たんこぶが出来てる...なんで?!」


その一言で俺は鳥肌が立った。

夜中の出来事は夢じゃない。そのたんこぶは昨日糸部がタオルで滑って転んだときにできたものだろう。

さっきまで夢だと思っていたものが現実だと分かった途端、急に恐怖がこみあげてくる。


「お前は、覚えてないのか?!」

「何が?」


響子が不思議そうな顔でこっちを見る。


「何がって...夜中のことだよ!」

「夜中?ああ、私もしかして話振ってすぐ寝ちゃった?ごめんごめん。

 って、そうだ!夢遊病はどうだった?私立って歩いたりしてなかった?」


「...なんも変わった様子はなかったよ」


どう答えていいかわからずに、俺は噓をついた。




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コメント;ちょっとシリアスな展開になってきましたね。

     相変わらず文章を書くのは難しいです。

     最近はほぼ水しか飲んでません(誰得)



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