第15話 雪降る聖夜 Part3

こんな小さな子供が、私たちが何故あの少女を追っているか、そんなもの知っている筈がない。普通であればこの程度の勧誘、即座に蹴っていただろうが今回は少し事情が違う。

私たちは基本的に【話しかけている】。勿論イレギュラーも存在するが、そう多くはない。

そして、私たちに【話しかけてくる】輩の殆どは、物語の主軸となる人物、またはそれらに深い関わりを持つ人物だ。

今回の軸は【マッチ売りの少女】。その少女の行方を知っている彼女は、私たちに話しかけに来た。そのうえ、少女の行方を知っているらしい。信用しても良さそうだ。

「…わかった。場所を教えて」

そう言うと、彼女は意外そうな顔をしてこちらを振り向いた。

「…てっきり、【そんな訳ないだろう!年上を馬鹿にするのも大概にしろ!】とでも言ってくるかと思ったけど…まあいいわ。教えてあげる」

知らない間にあらぬ誤解をかけられていたのか…。

「インコーントロ通りをまっすぐ駆けていったわ。あそこは人通りも少ないし一本道だから、すぐに見つけられると思うけど」

彼女の身体はやせ細っていた。私たちよりは確実にスピードは遅いだろう。何とかなりそうだな…。

「ありがとう。…あと、もう一ついいかな?」

「えぇ、何かしら?」

「こんなことを聞くのも野暮ってもんかもしれないけど…。きみは、あの子の何なんだい?」

無音の空間、人々の歩行音だけが聞こえる世界。まるで永遠のように感じられる数秒だった。少しして、少女が口を開く。

「…ただの友達よ」

少し言い淀んだような感じではあったが…。まあいいか。

「ありがとうございました。頑張ってきます」

「えぇ。あなたも頑張ってね」

君もやる気があるようで何より。さて、行こうか。


──────────


「…もう、何年前になるのかしら」

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