第14話 雪降る聖夜 Part2

とりあえず、彼女に話しかけてみよう。

「あ、ごめん。ちょっといいかな?」

…あれ、反応がない。どうしてだろう。

もう1回。

「…あのー、そのマッチを…」

私の話を聞く耳も立てずに、少女は何処かへ行ってしまった。…その足は、今にも折れそうな程やせ細っていた。


「一体何がいけなかったんだろうね…地雷は踏んでなかったと思うけど」

実際、私は「マッチがほしい」としか言っていない。彼女からしたらマッチは売れた方がありがたい筈なので、わざわざ私たちから逃げる意図が全く汲み取れない。まず、それ以上の言葉を投げかけていないので、地雷なんて踏む筈がない。…もしかしたら、同情か何かだと思い込んだのだろうか。

(…もしかして、)

え?

(いや、これはただの推測に過ぎないんですけど…あの子、喋れないんじゃないですかね?)

「喋れない?まあ、それなら何も言わずに…いや、言えずに何処かへ行ってしまうのもわからんでもないけど…」

(喉元、紅く染まっていた包帯を巻いてました。虐待、それか幼少期に動物に襲われて喉に深刻なダメージを負った…と考えられませんか?)

「そういえば確かに、喉元に包帯を巻いてたね。…原作って、確か誰もマッチを買ってくれなかったんだよね?だったら喉を使う事はそんなになさそうだし、出なくなっているのも納得がいく。…今回の条件は多分【あの子のマッチを買う】とかかな。…文面だけ見たらただのおつかいだね…」

待てよ…原作ではおばあさんも居たんだっけな。少女の味方だったけど、天国へいってしまった、おばあさんが。

…いや、深追いはやめておこう。動けなくなる。

「まずは、近辺を調査する所から始めようか。まだそんなに離れてなさそうだし」


「マッチ売りの少女?ああ、あの路地裏にいる子か。今の時代、マッチなんてそこら中に売ってあるのに何でわざわざ売るのかわからないな」

「マッチの子?…あのね、私は忙しいの。そんな事を聞く為に私の時間を割いたわけ?…ハァ」

「買おうとは思わないな。ずっと持ってるんだろう?裏路地裏で。湿って使い物にならないかもしれないじゃないか。それなら普通の店にあるマッチを買った方がいいだろ?」


──────────


まともな人間が居ない…。やっぱり人間という生き物は、自分に関係の無いものは「どうでもいい」で終わらせてしまう生き物なんだな。──


「マッチのお姉ちゃんの事をみんなに聞いて、どうしたの?お姉ちゃん」


…!?

「き、きみは…?」

腰まで届いている紫の髪、狐耳のついた、防寒対策をしっかりしている幼女が、突如現れた。

「場所、私知ってるよ。教えようか?」

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