第9話 追憶
…過去の記憶が流れ出してきた。思い出したくもない、歪んだ記憶が。
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「わっ!産まれた産まれた!…あれ?なんか黒くない?」
「そうだね…兄弟のはずなのにおかしい!」
「そうだそうだ!お前、僕らの弟を何処へやったんだ!」
産まれてすぐにここまで罵倒された生物もそこまでいないだろう。僕の人生は、そんな最悪のスタートから始まった。
「うっわダッセー!こんな水溜まりも泳げねーのかよ!w」
「俺らはこんなにスイスイ泳げるぜ?お前、母さんの血引いてんのか?ww」
「見てて面白いわ!その調子で笑わせてくれよ!www」
元々うまく泳げない体質だった僕は毎日のようにからかわれていた。そんな僕を心配したのか母さんが定期的に止めに入っていたようだが、全く意味をなさなかったみたいだ。
「この子が居ると、少し困る事もあるのよね…皆はどう思う?」
「はーいっ!捨てればいいと思いますっ!」
「賛成ー!こんな弟が居ても迷惑なだけだし!」
「そうしよう!…じゃあな、帰ってくるなよ」
「待って、まだ決定もしてないし最終決定権は母親である私にあるのだけれど…」
…。
「…じゃあ、出ていくよ。立派になって帰ってくるから…って、兄さん達は?」
「そうなのよ…あの子達、何処かへ行ったみたい。…気を付けてね。怪我だけはしないでね」
母親がまともだったのが唯一の救いだったが、焼け石に水だった。
「…うわっ!?」
急に上から水が降ってきた。雨が降っている訳でもないのに…。まさか…
「「「ハハハハッ!大成功ー!」」」
…あいつらか。
「…あ、ちょっと待てよ!逃げる気か!?おい!!!」
モラルの欠片もない兄弟だった。生まれつき逃げ足は速かったので、すぐに突き放す事は出来たが…。
そして、今のこの状況である。こいつらは一体何なんだ?
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