閑話 ドロリ&???




sideドロリ




「ニック冒険者ギルドで素材買い足してきて!」

「分かった!すぐ向かう!」

「ペリル婆さん応援に駆けつけたよ!」

「リクかい?助かるねぇ」


まずいのぉ。人が多すぎるわい。


商業ギルドは結構広いはずなんじゃが。


「爺さんあれが欲しいから取ってくれ!」


「これか?1500ペオじゃ」


上にある素材を脚立を使って祝福者に渡してやる。


「これで1500ペオ!?安っ!」


儂も思うぞ。安すぎると。じゃが上の命令じゃから逆らえんのじゃ。


「ドロリさん!このままだと赤字も赤字、大赤字ですよ!?」


経理であるミーが儂にそう言ってくる。


「分かっておるが、これを乗り越えたら黒字になるはずじゃ」


ここで準備を終えた祝福者たちは魔物と戦ってくるじゃろう。


そして魔物の素材をここで売ってくれると思うんじゃ。


売ってくれたら、こっちで加工したりなんなりできるからの。


そこまで、そこまで耐えたらいいだけなんじゃ。


じゃが今のままじゃと商業ギルドが終わってしまう!


普段こんなに客は来ないんじゃが、祝福者は凄いのぉ。


少人数で経営しておるから人手が足りん。


儂まで手伝っとんじゃぞ?一応商業ギルドの幹部じゃよ?


とか考えておる間にも注文の声が鳴り止まんのぉ。


「じいさん」また注文のようじゃな「手伝いましょうか?」ほう?


儂は手伝うと言ってくれた男を見る。


今日は何百人と接客してきたがそう言われたのは初めてじゃな。


正直、とてもありがたい。猫の手も借りたいところじゃったからの。


「良いのか?なら、そこにある毛皮をこっちまで持ってきてくれ」


「了解だ」


男は返事をすると毛皮を取りにいった。


その行動を見てかどうかは分からぬが、他にも数人手伝ってくれた。








「お疲れ様でしたー!」


ミーが儂ら休憩組に声をかける。


まだまだ客は多いが、ピーク時よりはマシじゃの。


「祝福者の皆、手伝ってくれたこと感謝するぞ」


儂らの手伝いをしてくれた彼らに頭を下げ、感謝を述べる。


そのあと彼らは各々、交流を始めたので儂は椅子に座る。


遅めの昼食をとるためじゃな。


そんな儂のもとに1人の男が寄ってきた。


こやつは確か最初に手伝うと言ってくれた男じゃの。


「なあじいさん、ファンドって売ってるか?」


探したらあるとは思うがそれを要求してくるのは珍しいのぉ。


「お主、ファンドで何をするんじゃ?」


興味本位で彼に聞いてみた。すると人形を作ると言い出しおった。


それからこうも言っておったのぉ。


「人形作成を頑張っていつか有名な造形師になってやる」


とな。ちなみに彼の言う人形は、人間そっくりな感じらしい。


「ほっほっほ、面白いやつじゃの」


人形といえば【裁縫】でできるぬいぐるみが主流じゃと言うのに。


「良いじゃろう。10kg10000ペオのところを、手伝ってくれたからのぉ···20kg10000ペオにしてやろう」


儂がそう言うと彼は喜びを露わにしておった。


ここで自己紹介をする。名前がわからんと不便じゃからの。


自己紹介を終えたあと、ネジュは儂に従業員の数を聞いてきた。


「今は儂を含め6人で経営しとるところじゃな」


「じゃあ、じいさんは普段から接客みたいなことをしてるのか?」


難しい質問じゃのぉ。


一般客に対しては接客しておらぬ。


じゃが、幹部ということでお偉いさんと商談などをしておるからの。


「今日が特別なだけで普段はせぬ」


少しばかし悩んだが、そう答えることにした。


「なら俺の人形に商売を教えてほしいんだが···出来そうか?」


人形に商売を教えるじゃと?そんなことが可能なのかのぉ?


「良いじゃろう」


半信半疑になりながら許可をだす。暇つぶしのためじゃな。


その返事を聞いて満足したのか、ネジュは帰っていった。







それから9日後···







その日はこれといった要件もなく、商談室でまったりしておった。


「ドロリさん、オノさんという方がいらしてますよ」


ドアをノックし、ミーが入室しながら言う。


はて?オノとは誰じゃ?


「どんな風貌なんじゃ?」


「あれ?知り合いかと思いましたよ。青髪のイケメンさんです」


青髪といえばあやつがおるが、こんなところまで来んじゃろうな。


「そうか。下で待たせておるんじゃな?」


「はい」


ミーは部屋を掃除しながら儂の質問に答える。


よっこいしょと重い腰を上げ、1階に向かう。膝が痛いのぉ。


「お主がオノかの?」


エントランスに行くと、黒い服を着た青髪の男がいたため声をかける。


「そうだ。ネジュの人形だ」


ネジュの人形じゃと!?あやつ完成させよったか!


「ほっほっほ、お主が人間みたいな人形か」


人形と言われなければ全く分からん出来じゃの。


「ちょうど暇しておったし儂で良ければ商売について教えてやろう」


そう提案するとオノは頼むと言ってきた。


「商人になりたいんじゃろ?それならば最低限敬語は使わんと」


まあ儂はもう使わんでもいい年齢じゃがの。


オノはなんのことか分かっておらぬような表情じゃな。


それからオノと一緒に商談室に行き、商売とはなにか。経営の仕方、信頼を得るには、経済の回り方などを時間の許す限り教えてやった。




いやはや、無知というものは恐ろしいのぉ。


オノに教え始めてから儂が抱いたことはこれじゃ。


教えたことをスポンジのように吸収し自分のものにするんじゃから。


今では流暢に敬語で話せるようになったしの。


窓越しに道を眺め、そう思い耽る。


ってあの容姿はネジュじゃないか?こっちに来そうじゃな。


「オノ、少し待っておるのじゃ」


商談室で待つように指示し、儂はエントランスに向かう。


ネジュよ、お主の作成した人形はすごいぞ。










──────────────────────────────


※場面や視点、登場人物がガラッと変わります。



この場所を表現するならば人形会議パペットかいぎが適切だろう。


「司会はわたくし──が、書記は──が担当しますわ」


まず口を開いたのは赤いドレスを身にまとった女だ。


「今回の議題はなに?」


質問するのはまたしても女で、髪を赤と青のツートンにしている。


「今回はネジュ様の呼称について話し合っていただきますわ」


とのことだ。


「マスターでいいアル」


「そんなの創造主に決まってんだろ!」


「ご主人様が最適でしょう」


「師匠一択でしゅ」


「「僕たちはキングを推薦するよ」」


「···なんでもいい」


「テキトーでいいんだよそんなもん」


「お主は王をなんと呼んでおる?」


「あたしかい?あたしは主って呼んでるよ」


「私たち獣人型人形アニマルパペットはオーナーと呼んでるのだ!」


「そうだニャン」「オーナーはオーナーだピョン」


「···俺もなんでもいい」


「ミーはゴッドがベストですねぇ」


「某と猿は殿と呼んでるでござる」


「猿ちゃうわ!ちゃんと─っちゅう名前持ってるわ!」


「団長で良いと思いますよ?イヒヒ」


「見事にバラバラどすな〜」


「·····」


1人を除いて出席している全員が発言をした。


「私たちの呼称が違うと混乱してしまいますよ」


書記を担当しているメイドの格好をした女が言う。


そしてしばらくの沈黙。


真剣に考えている者もいれば、居眠りをする者もいる。


だが、仕方のないことだろう。なぜならこの者は『自由』なのだから。


ほら1人遅れて参加してきたぞ。


「お、──。また研究に没頭してたのか?」


「ああ、悪いの〜。して、この空気の重さはなんじゃ?」


遅れて参加してきた者が円卓に腰掛け、23体の人形に問う。


「呼称が決まらないニャン」


「呼称···それは難問じゃの」


そこからまたしても沈黙。しかしそれを破るものが現れた。


それは今まで無言を貫いていたペストマスクをした者だった。


「···創聖様」


短く一言。だがその影響力は半端じゃなかった。


「おー創聖様!いいアル!」


「流石──ですね」


「創聖様ですか···イヒヒ」


「···そーせー」


「皆さん納得のようですわね。ではこれからは創聖様と呼びましょう」


これにて今回の人形会議は終了した。








余談:彼らは二十四聖党ネジュリアンと恐れられている。





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