剣は投げるもの
フィールドに出るため街を移動する。
もう夜だが、これから外に行くであろうプレイヤーも多く見かけるな。
今回は森ではなく、見晴らしの良い草原で狩りをするつもりだ。
「おい、あれ噂の鬼ちゃんじゃないか?」
「え!マジで角生えてんじゃん!」
なんか騒がしいな。有名人でもいるのか?
と思いながら北門を潜る。
おお!初めて外に出たが、なんかこうすごいな!
ん?通知が来たんだけど。10MP消費しました···?
あ!【コネクト】のことか!なるほど、5分で10消費すると。
しかし不思議だ。俺のスキルは使えないがMPは俺に依存なんだな。
まあいい。残りMPは120だからちょうど1時間後がタイムリミットか。
さーて俺と最初にエンカウントする魔物はどいつだー?
初めての冒険にワクワクしながらフィールドを歩き回る。
しばらくすると、水色の小さな魔物が俺の前に立ち塞がった。
「現れたな、進化したら強くなる魔物筆頭スライム!」
ドラ○エみたいに可愛くはないな。どちらかというとキモ路線だ。
ふっ、長剣の錆にしてくれるわ!
「“加速”!ってうわぁ!」
スキル【加速】を使って接近しようと思ったが無理だった。
俺は勢いそのままに地面とキスしてしまった。
起き上がってスライムを視界に収める。
あいつ、飛び跳ねて俺をおちょくってやがる!
「絶対許さんぞ!」
今度は加速せずに近づく。よし、この距離ならいける!とりゃ!
剣を振り下ろしたが外してしまった。スライムも容易く避ける。
たまたまだな。たまたまミスしただけだ。そうに違いない。
心の中でそんなことを思いながらもう一度斬りかかる。
だがやはり当たらない。初めての戦闘だから仕方ないよな!
それから何度もスライムに向かって攻撃したが全部ミスだった。
なんとなくだが、スライムも俺を哀れな目で見ている気がする。
そうしてヤケクソになった俺は剣を投げた。
あ、当たった!スライムがポリゴンとなっていく。
『北の草原キラー』があるため一撃だな。
締まらない終わり方だが勝ちは勝ちだ。やったぞー!
━━━━━━━━━━━━━━━
称号『戦闘能力皆無』獲得しました
━━━━━━━━━━━━━━━
「おん?なになに、ノーバトルセンス···?うっせえ!」
自分でも、俺やっぱ戦闘向いてないわと思ってたけど称号にすんな!
え?けど、相手の攻撃を知らせるって効果すごくないか?
あと魔物を倒したらアイテムを入手できるらしいがどこにあるんだ?
投げた剣を拾い、戦闘した周辺を歩き回ってみたが見つからない。
と思ったら自動的にインベントリの中に収納されていた。
━━━━━━━━━━━━━━━
残りMP僅かです
━━━━━━━━━━━━━━━
うぇ!?もうそんなに時間経過してんの!?マジかよ。
MPを確認したらあと10しかなかった。つまりあと5分!
急ぎ足で街に戻ろうとしたがゾンビとエンカウントしてしまった。
うわ、気持ち悪いな。ヨダレ垂らしたまま近づかないでくれ。
スライムに苦戦した俺が人型の魔物と戦闘して勝てるか?否!
無理だ!勝てるはずがない。逃げ一択だな。
そう思ったため俺は逃げようとした。
いきなり俺の首元に赤いマーカーが表示される。『戦闘能力皆無』か!
逃げる前にゾンビが飛びかかってきて俺の肩を噛みついてきた。
「いっだぁぁ!」
HPが50ほど削られた。早く帰らせて!お願いしますゾンビさん。
俺は剣を持ってることを忘れ、馬乗りになっているゾンビを殴る。
だが『戦闘能力皆無』の俺だ。全然当たらない。
そしてゾンビは俺の首に狙いを定め噛みついてきた。
ゾンビの顔との距離が近くなったとき、俺の視界は真っ黒になった。
「ちっ、死に戻···ってない?」
てっきりゾンビにやられたため、教会中央でリスポンかと思ったが個室で目を覚ました。てかデスペナ表示されてないな。
待てよ。噛みつかれる直前にMPが切れたのなら?
【コネクト】が自動的に解除されるはずだ。
解除された俺が次に目を覚ます場所は【コネクト】した場所。
今俺は座っている。ということはつまり···
「死んでない!けどシェが襲われてる!」
まずい、あの状態からシェは勝てるか?
もしかしたら負けるかもしれない。負けたら人形はどうなる?
プレイヤーじゃないシェが生き返る可能性は極めて低いと考えられる。
どうする?今からでも北の草原に向かって助けにいくか?
だが戦闘能力皆無の俺には応援くらいしか出来ないぞ。
思案していた俺は音がしたため顔を上げる。
あ、マスプが本気出してるわ。人形が50個ほど量産されてる。
ん?人形を使って援軍にいけば大丈夫なのでは?
爆発の威力は強いし、範囲も2mくらいあるしな。
そう思った俺は人形を1つ手に取り、【爆発】を注入する。
よし!シェを救いに行こう!
急ぐために勢いよくドアを開ける。うん?なにかに当たったな。
「うぅ痛いアルぅ」
···へ?驚いた俺はその場に立ちすくむ。
「マスター!うちを置いていくなんて酷いアル!」
華服をボロボロにした状態のシェが帰ってきた。
それは理解してるが理解できない。
よくあの状況から帰還してきたな。
「シェ、その、大丈夫だったか?」
「問題ないアル!それより謝って欲しいアル」
確かにどこも出血していない。
「無事でよかった···ごめんな」
「許してあげるネ!」
マジでよかった。次からMP管理はしっかりしないとな。
「1つ聞いてもいいか?」
「なにアル?」
シェに聞いたのは俺が【コネクト】してる間の状況だ。
「うちはマスターをずっと空から見てたネ」
空から?と疑問に思ったので、更に質問する。
「なるほど。三人称視点で見てたんだな」
俺が【コネクト】した人形は三人称視点で俺を見れるらしい。
だが、その状態で俺に話しかけるのは無理だということだ。
これは先程マスプでも試したから確定だな。
「そうアル!スライムに苦戦してたところも見てたネ」
うっ、恥ずかしい。あれは忘れてくれ。
はぁ、今日は街探索や戦闘などで疲れたな。
だから俺はログアウトする前に言っておく。
「自由にしてていいぞ」
ってな。自動行動が結構使えるから助かる。
そのあと、俺はメニューを開きログアウトをタップした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます