オノ創造
ログイン。
仕事の都合でプレイできなかったためログインは3日ぶりになる。
マスプ、怒ってないかな。大丈夫だよな···。超不安だ。
だんだんと五感がハッキリしてくる。
よし、動けるようになったぞ。マスプはどこだ?
辺りを見渡すと黙々と作業するマスプを見つけた。
「マスプ!なかなかログインできなくてすまんな」
声をかけるとマスプは作業をやめ、問題ないと言うように首を横に振る。
だが俺には問題が発生した。
「これ···もしかしてファンドか!?それもこんなにたくさん!」
それは俺がこの前購入したファンドだった。
しかし数が尋常じゃない。
教会の隅どころか、結構大きな場所を占領している。
「お久しぶりです、ネジュさん」
「久しぶり。これ、すまんな」
ファンドを指さしながら苦笑いで言う。
「いえいえ、神父様に話はしましたから」
流石できる女ノーン。
神父に許可を取ってくれるとは。
ノーンと話していたらマスプがまた量産しようとするので慌てて止めた。
これ、効率はいいけどログイン出来なかったら終わりだな。
命令するときは目標を設けるようにしようと心に刻んだ。
じゃあインベントリに入れていこう。全部収納できるか不安だが。
収納している間に、3日間···こっちでは9日間だな。
頑張ってくれたマスプのステータスを確認するぞ。
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名前:マスプ
種族:人形Lv7
職業:量産者Lv10
HP:170
MP:170
■スキル
【鑑定Lv2】
【分析Lv7】
【模倣Lv5】
【複製Lv5】
【量産Lv8】
【効率化Lv3】
■称号
『ネジュの人形』
『量産の鬼』
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お?レベルが上がってるじゃないか。生産でも上がるってことか?
あとで要検証だな。それよりも気になることがある。
『量産の鬼』とはなんぞや?と思ったので詳細を見てみる。
『量産の鬼』···量産にかかる時間を短縮。また【効率化】を取得。
はい、では実際にその力を見せてもらいましょう。
「マスプ、ファンドの量産を開始してくれ」
すると目にも留まらぬ速さで手を動かしている。
次の瞬間、マスプの手にはファンドが。
素晴らしいが、原理が分からないため恐ろしいな。
「ストップだ」
2つ目に取り掛かろうとしていたので止める。
マスプは左右に首をリズミカルに振っているな。
「すごいな。感心したよ」
俺が褒めると、飛び跳ねて喜びを表現する。
ここで悪いお知らせがある。
20枠の100スタックあるインベントリなのに全部収納できなかった。
どうしよう···。ここで消費するか?
「ノーン、ここで人形作成してもいいか?」
「大丈夫ですけど、個室に移動してくださいね」
確かにここで作成し始めたら迷惑だな。
「マスプ付いてこい」
なんでそんなに目をウルウルさせてんだよ。マスプは俺の人形だぞ。
少し行ったところにある個室に移動した俺は準備に取りかかる。
「“工房”&“人形作成”」
ただ、今回作成する人形はマスプと違い、生産に重きを置かない。
今日は商売を目的とした人形を作成するつもりだ。
ゲームにはログイン出来なかったが、頭の中で考えていたからな。
お金、この世界でのペオは絶対に必要になってくると思う。
そのために早い段階でお金を入手できるルートを確保しなきゃならない。
そう考えたからだ。
ちゃんと攻略サイトを見て今後のプランを決めたんだぞ。
あ、攻略サイトに面白い記事があったから紹介しとこう。
なんでも、このPEOはテスト確認をしておらずリリースしたんだとか。
つまりこれから修正やアップデートが入る可能性が高いらしい。
普通なら考えられないぞ。テストをしないなんて。
そんなゲームがよく1000万ダウンロード突破したな。
個人的に修正するなら【工房】をもっと使いやすくして欲しい。
こんなことを考えていても手はちゃんと動かしているから安心しろよ。
造形自体は苦じゃない。むしろ楽しい。
ほら、もうだいたい完成してきたぞ。
今回はファンドがたくさんあるため贅沢できる。
「服は何がいいかな。マスプ的にはどうだ?」
マスプは自分の着ている服をアピールしてくる。
聞いておいてなんだが商人が作業服はおかしいから却下だな。
「スーツにするか」
営業の人なんかはスーツのイメージが強い。
あ、マスプが四つん這いになっている。
落ち込む要素もあるとは。人形だけど感情豊かだな。
言っておくが今回は男の子だ。いや、青少年の方が正しいな。
そのため髪型は短髪にしよう。目と髪の色は青だな。
これだけじゃ特徴が無さすぎるからなにか付け加えよう。
「うーん、商人に合いそうなものは···そろばんかな」
俺の独断と偏見により、持ち物はそろばんに決定した。
すまんな。これくらいしか思いつかなくて。
さて、あとは顔や服などを微調整して完成だ。
「これでよしっと!“命灯”」
やべっ、目閉じるの忘れてた!
と思ったが時すでに遅し。ム○カ大佐みたいに目がやられてしまった。
痛みが治まり、目を開けるとキョロキョロしている青少年がいた。
「話せるか?」
決まり文句と化したセリフを口にする。
「···ァァ···」
青少年は何かを発したがまだ話せるレベルではないな。
━━━━━━━━━━━━━━━
スキル【命灯】がレベルアップ
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レベルアップしたけど、確認は今じゃない。
「10分くらい待っててくれ」
俺はそう呼びかけながらステータスを開き【能力注入】を開始した。
10分後···
「これで話せるか?オノ」
「あ、あー。話せる。ありがとう」
まだ少しぎこちないが話せてよかった。
なぜ話せたのかはスキルを見たらわかると思うぞ。
━━━━━━━━━━━━━━━
名前:オノ
種族:
職業:
HP:100
MP:100
■スキル
【
【
【
【
【
■称号
『ネジュの人形』
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そう!スキルに話術を取り入れてみた。
あと名前のオノだが、俺の友達に小野って営業のやつがいるんだ。
小野はもう出てこないから覚えなくて結構だぞ。
スキルは商人ということでこのラインナップだ。
「オノ、商業ギルドに行ってドロリという人物と会ってこい。そいつにネジュの人形と言えば理解してくれるはずだ」
「分かった」
実はファンドを買った日に俺はドロリという男と接触していた。
ドロリは商業ギルドの幹部みたいな存在で優しいおじちゃんだな。
はい、逆算してください。
わざわざ3日前から商業ギルドと仲良くするやつなんているか?
恐らくいないだろ。だが俺はこれを考えて行動していた。
簡単に述べるならば、
命令に従い、オノが部屋を出ていく。頑張ってこいよ。
ドロリに商売とはなにかを教わってきて欲しい。
見送りを終え、マスプの方を見ると明らかに拗ねている表情だ。
あー、分かったぞ。オノが話せて嫉妬してるんだな。
俺はマスプの茶髪を撫でながら言う。
「マスプ、確かにお前は話せない。だがお前は俺にとって必要不可欠な存在だ。だから拗ねるな」
ここで重要なのは必要不可欠、この五文字だ。
俺の睨んだ通りマスプはこれまでとは一変、嬉しそうな表情になった。
「もう少し使わせてもらおうかな」
結構使ったはずだがファンドはまだ有り余っている。
次はついに
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