マスプ、量産活動を開始




俺たちは街の中央にある噴水に設置されていたベンチに座る。


最初は俺の作った人形がちゃんと歩けるか不安だったが、杞憂に終わった。


「さて、まず名前をつけないとな」


(コクコク)


これは試作1号を使って分かったことだ。


自動行動をするためには名前を呼び、命令しなければならない。


名前を呼ばず命令するとバグり、俺に付いてくるようになる。


移動する際に俺は名前を呼ばず命令しただろう?


まず俺が把握しているこの子の情報だ。



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名前:――

種族:人形Lv1

職業:――


HP:100

MP:100


■スキル

【選択可能】

【選択可能】

【選択可能】

【選択可能】

【選択可能】


■称号

『ネジュの人形』


━━━━━━━━━━━━━━━



称号があるな、見てみよう。


『ネジュの人形』···ネジュが創造した人形であることの証。


商標登録みたいなものか?


あと、STRやVITなどの能力値はないらしい。


だが、そんなことはどうでもいい。


俺はこの子に粘土の量産を担って欲しいと考えている。


量産出来たら俺はこの子みたいな存在をたくさん作れるからな!











悩みに悩みまくって決めたステータスがこれだ。



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名前:マスプ

種族:人形パペットLv1

職業:量産者りょうさんしゃLv1


HP:100

MP:100


■スキル

鑑定かんていLv1】

分析ぶんせきLv1】

模倣もほうLv1】

複製ふくせいLv1】

量産りょうさんLv1】


■称号

『ネジュの人形』


━━━━━━━━━━━━━━━



このスキルを見てみろ!完璧だろ?


量産したいものを鑑定と分析で理解し、模倣や複製で極限まで近づける。


そして99.9%真似たものを量産するというものだ。


名前は英語で量産の意味であるmass productionから選んだぞ。


職業も量産者にして、より量産しやすいようにした。


「よろしくなマスプ」


(コクコク)


激しく頭を上下させているな。


「マスプ、いきなりで悪いんだがこれって量産できるか?」


俺はインベントリから石粉粘土ファンドを取り出しながら言う。


インベントリの説明なんてしなくても大丈夫だろう。


するとマスプは持っているファンドを凝視し、再度こちらに目を向ける。


「どうだ···できそうか?」


不安になったので聞いてみると、ゆっくり頷いてくれた。


「そうか、しばらくはそれを量産出来るように頑張ってくれ」


俺氏、本日のやること終了。


これから何しようか。


ファンドはまだあるため、作ろうと思えば作れるが、スキルレベルが低すぎてコミニュケーションが取れないんだよな。


となるとやはりスキルレベルを上昇させるのが第一だな。


あ、そうだ!


【水魔法】と【土魔法】を使って泥人形を作ろう。


泥人形と言っても、あまたの種類が存在する。


だが今回は七福神の1柱である大黒天を作るつもりだ。


金は命より重い····!と誰かが言っていた気がするからな。


土と水の割合は8:2くらいか?あとで微調整していくけど。


「“工房”と“人形作成”」


商業ギルドの工房が無料と言っても、やはり自分だけの工房の方がいい。


それとスキルレベルを上昇させたいという魂胆もある。


さてさて、泥人形作り頑張りますか!





···1時間後





泥人形大黒天作りが作業と化し、だいぶ飽きが回ってきたころ。


マスプが俺の服をグイグイと引っ張ってきた。


「お、できたか?」


俺の目を見て、頷きながらマスプは手を見せてくる。


そこにはお世辞にもファンドとは言えない何かがあった。


だがここで『お前はダメだ』的なことを言ってしまうとダメだと思う。


だから俺はこう言ってやった。


「お、最初にしては形になってるぞ。俺と一緒に頑張っていこう」


ふ、決まったな。


これでマスプはより励んでくれること間違いなし!


俺の気持ちが伝わったのか、再度頷きまた作業に戻った。


あ、忘れてた。そろそろログアウトしないと。


俺がログアウトしてる間マスプはどうなるんだ?


という疑問が湧き、頭をぐるぐると駆け巡る。


「マスプ、一旦やめ。教会に向かうぞ」


分からないことがあればノーンに聞けばいいと、俺の脳が言っている。


「“解除”」


スキルレベルをあげるために使用していた工房と人形作成を解除する。


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職業:人形使いがレベルアップ

スキル【水魔法】がレベルアップ

スキル【土魔法】がレベルアップ

スキル【人形作成】がレベルアップ

スキル【工房】がレベルアップ

称号『人気者』を獲得

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やっぱり練習すればレベルアップするんだな。


移動しながらスキルの【工房】と称号の『人気者』を確認する。


【工房】···自分の生産スペースを確保出来る。消費MPは1時間で120


『人気者』···一定時間内にプレイヤーから1000回以上見られる。


【悲報】俺、プレイヤーに1000回以上見られる。


何故だ?悪いことなんてしてないだろ?


あと、【工房】のやつ。絶対いらないスキルじゃん。


無振り状態のMPが100だぞこら。


レンタル工房を見つけた時から薄々思っていたけどな。


これ絶対必要ないよね。お荷物スキルだよな。


はぁ、GMっぽい少女も言ってくれたら良かったのに。


とか不満を垂れ流していると、教会に着いた。


ノーンさんはどこかなーっと。


すぐ近くにいた。ラッキー。


「さっきぶりだなノーン」


俺が声をかけると、またあの笑顔を見せてくれた。


「さっきぶりですね。その子についてなにか聞きたいことが?」


良かった。俺のこと覚えてくれてたわ。


あとやはりノーンはできる女だ。


マスプのことについて聞きに来たことがバレるとは。


「ああ、その通りマスプについて聞きたいことがある」


「マスプちゃんというのですね。初めまして」


マスプは喋れないため頷くことしか出来ない。


「マスプは俺の人形なんだが、俺がログアウトすると人形はどうなるんだ?」


俺の人形と言った瞬間、ノーンは俺に迫り寄ってきた。近い近い。


「マスプちゃん人形なんですか!?人間だと思っちゃいましたよ!」


驚くのも無理がない。だって、ほぼ人間なんだもん。


「そうだ。で、返答やいかに?」


ウザイようだが時間がないので許してくれ。


ノーンもなにかを察したのか大きな咳払いをし、説明し始めた。


「召喚獣やテイムした魔物等はマスターがログアウトしても活動し続けますよ」


ログアウトのことは普通にログアウトなんだな。


そして活動を続けるだと!?


マスプに量産するように命令しとけばすごく効率良いな。


「ありがとう。あと俺の名前言ってなかったな。俺は人形使いのネジュだ」


「ネジュさん、また来てくださいね。もちろんマスプちゃんを連れて」


それマスプが目的と言ってるようなもんだからな。


まあ、お世話になったしいいだろう。


「マスプ、教会の隅で量産をしてくれ。ノーン、マスプを見守ってくれないか?」


絶対ノーンは快諾する。絶対だ。


「はい、私がゴロツキからマスプちゃんを守ります」


ほらな。でもシスターの役目を忘れるなよ?


と思いながら俺はメニューを開き、ログアウトした。





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